第110話 水中一騎

 宝石争奪戦が行われている中、さらに一種目、他の会場ではとある種目が行われていた。


『種目名:水中一騎

 会場:海』


 広大な海の中、二人の魔法使いは向かい合っていた。

 そこは海の中であるが、両者は魔法を使い、水中での呼吸、そして視界を確保していた。


 一人は閃光ライトニング学院からは五年生のララ=ラーラ。

 対するは名門ヴァルハラ学園から三年生のセント=オリヴィア。


「私はララ=ラーラ。職業は魔法海古学者って言ってねえ、世界中の海の研究をしているう。つまりは、海については知り尽くしているんだあ」


 まるで喋りたての赤子のように言葉を発し、その様は無邪気である。


「そうか。だがな、私は魔法教育者。海や水に関しては知識はある方なんだがな」


 セントは知的に語ると、一つの書を手にする。


「この水中一騎では、先に相手を戦闘不能にさせた方が勝ち。ならば簡単だ」


 そう言うと、セントは魔法を発動した。セントが発動した魔法により、ララの体には水が纏わりついた。


「〈水錠ウルグマ〉。どうだ?抜け出せるか?」

「ああ。水で相手を束縛する魔法う。だがこの魔法の弱点としてはあ、沸点に達すれば容易に消えるということだあ。こんな感じにい」


 そう言うと、ララは全身に熱を纏わせ、水は沸騰し、形を維持できずに周囲の水へと同化した。


「さあて、私を倒すことは君にはできないい」


 ララは満面の笑みでそう言い、次の瞬間、セントは水の槍を全身に刺され、気絶して戦闘不能となった。水の槍はセントの体を貫かなかったものの、彼女の神経には鋭い感覚で刺激された。


「海とは広大で面白いい。だからまだ研究し足りないよお。とはいえ、君はまだ海については知らなすぎるう。もっと学んでから私に挑めえ。セントちゃん」


 そう言いながら、ララはセントを抱えて海を上がる。


「早く帰って海の研究でもしようかなあ」


 その試合を見ていた生徒たちは、話しながら帰っていた。


「良い勝負だったな」

「やっぱあれは努力の差だな」


 そう話す二人に、アーカイブは呟いた。


「なあお前ら。もし努力している方が勝っているのなら、負けた奴の努力はショボかったのか?違うんだよ。努力でも何でもない。ただの結果だ。そこにいちゃもんをつけるのに、きっと意味はないんだよ」

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