第104話 それが彼女の結論であった。

 ブックはひたすらに走っていた。

 たった一人の少女を、スカレアを探して。


(スカレアは自らを弱いと決めつけ、その殻に閉じ籠っているんだ。駄目なんだ。それじゃあいつは気づかない。このまま弱いと思い続け、あいつは……)


 ブックは魔法戦場の中を駆け抜け、スカレアを探すも、どこにも見当たらない。


(どうしてどこにもいないんだよ)


 悔やみつつ、ブックは息をきらして冷静になって考えた。


「そういえば、全知全能の力があったんだっけな」


 ブックは分厚い書物を出現させ、その書物のページを一枚一枚めくっていく。


「スカレア……スカレア……スカレア……」


 何度もページをめくり、そこでブックは見つけた。スカレアについて書かれているページを。

 ブックはそのページを食い入るように見る。


『スカレアについて。

 彼女は貧しい親のもとに生まれ、使えないと罵られた後、孤児として彼女は捨てられた。その頃から彼女は自分を責め続け、時に死のうとしたりするも、周りの大人たちに止められ、死ぬことはできなかった。

 彼女はいつしか感情を失い、絶望していた。そこでアズハ家に拾われるも、彼女が感情を取り戻すまでは二年もの月日がかかった。今ではすっかりアズハ家の一員ではあるが、時折彼女は思い出す。

「お前は弱いな。スカレア」

 現在のスカレアの居場所……』


 ブックは静かに書物を閉じた。


「スカレア……」



 その頃、スカレアは魔法学園ヴァルハラの屋上でうずくまっていた。

 それを遠目から見ていたカーマ先生は、ノーレンス理事長へと報告するも、ノーレンス理事長は言った。


「カーマ。誰も屋上には行かせるなよ。もうすぐ彼女の英雄が駆けつけるから」


 屋上でただ一人、寂しく泣くスカレアは、もう何も考えられなくなっていた。ただ自分の過去に浸り、自分を責め続けていた。


「はぁぁ」


 私は深いため息を吐いた。

 もう生きていることが嫌になった。強くなれない自分が嫌いになった。

 私は結局無力だから、だから私が生きていようがいまいが、必要とはされないんだ。

 私は必要ない。私は必要ない。私は必要ない。私は必要ない。私は必要ない。私は必要ない。私は必要ない。私は必要ない。私は必要ない。

 だから私は、必要ないんだ。

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