第103話 魔法戦開催

 魔法戦当日。

 舞台は名門ヴァルハラ学園附属領土の一つ、"魔法戦場"。

 ここ魔法戦場には、多くの闘技場や屋台などが備え付けられており、魔法戦のようなイベントがある日にはうってつけと言える会場であろう。

 そしてここに、ヴァルハラ学園生徒も含め、十校の魔法学園から生徒が集まっていた。


「二年A組の生徒たちよ。今日はいよいよ魔法戦。ということで、君たちも皆何らかの種目に参加することになるから、油断せず魔法についての知識を深めておくんだぞ。それとちゃんと試合を見て学べ」


 そう言い、カーマ先生は去っていった。

 僕たちは教室にて、各々渡された魔法手帳を見ていた。その魔法手帳にはどんな種目があるのかや、それぞれが参加する種目が記載されていた。


「ねえ。イージスは何種目参加するの?」

「俺は三種目だな。アニーは何種目参加するんだ?」

「私は四種目」

「多いな。それほど実力が認められているってことなんだな」


 その背後で、スカレアは自分の参加する種目を見て何やら悲しい顔を浮かべていた。


「二種目か……」


 そんなスカレアを見かねてか、ブックは歩み寄った。


「スカレア。どうかしたのか?」

「何でもないよ。私、すぐに試合あるから、ちょっと行ってくるね」

「行ってくるって……」


 最初の試合が始まるまで一時間もある。だがスカレアはどこかへと行ってしまった。

 虚しさが残る中で、ブックは静かにため息を吐いた。



 魔法戦開会式。

 多くの生徒が二万人は入れる会場の観客席に座り、会場に立つノーレンス理事長を見ていた。


「ではこれより、魔法戦を開始する」


 ノーレンス理事長が指を鳴らすと、空一面を満面の花火が彩った。これから始まる魔法戦に、多くの生徒が胸を踊らせていた。



『参加校

 名門ヴァルハラ学園

 貴門ハーク学園

 奇才キリン学園

 優秀セントリー学園

 都立ホーヘン学園

 平均シエラ学院

 愛嬌プリティー学院

 閃光ライトニング学院

 竜門テンペスト学校

 秀才アマツカミ学会』



 まずは一つ目の種目が始まった。


『一種目目:空中レース

 会場:空』


 一試合十人ずつ。

 それぞれの学園の一人が一試合に参加し、空中に刻まれたコースを辿り、誰が一番速くゴールできるかというレースだ。

 参加者はほうきに乗っても構わないし、魔法で空を飛んでも構わない。ただし転移魔法だけは禁止されている。だが相手を魔法で攻撃することは許可されている。だがその分速度は落ちるが。


 第一試合。ヴァルハラ学園からはピット=シータン。

 彼の魔法職は魔法弓士と魔法精霊術士であり、魔法によって空を飛ぶのを得意としている。

 ピットは背中に翼を生やし、空を飛ぶ準備をしていた。


(皆速そうだな。しかも皆ベテランっぽいな)


 試合開始の笛が鳴り響く。

 その直後、ピットは翼を広げ、空を素早く飛んだ。その速さに他の魔法使いを置いてきぼりにし、ピットは二位と三秒も差をつけてゴールした。


(まあ、僕に速さで勝つことは誰にもできないけどね)


 そんな中、ブックは通りすがりに聞いた。


「スカレアさんがまだ来ていません。代役を用意しておきますか?」


(スカレアが来ていない!?)


 それを聞くや、ブックは走り出した。


(スカレア、やっぱお前はあの時のことを、気にしているのか)

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