第100話 トール=
「トール!」
トールは突如として出現し、一瞬にして周囲を電撃によって破壊した。周囲は戦慄に包まれ、トールの出現を静かに察したカーマやアズールたち。
そんな中、ハーブとウォーターの真正面には、トールが地に拳を打ち付けてしゃがみこんでいた。
「どうして……」
ハーブとウォーターは呆然とし、ただ立ち尽くすことしかできなかった。その二人へトールは一度視線を向けた。その直前、ハーブは瓶に入れていた粉をまいた。
「透明剤」
透明剤。
この粉をかけた物体、物質は透明になる。ただし持続時間は一分ほどの未完成品。
トールは透明になっているはずのハーブとウォーターを凝視していた。ハーブとウォーターは冷や汗を流すも、呼吸すらとめ、気配を消していた。
それを功を成したのか、トールはどこかへと歩き出していた。
「丁度一分か……」
ハーブは肩の力を落とし、思わず膝をついた。
「どうしてここにトールがいる……」
トールの出現に困惑したハーブ。
トールが向かう先は、この遺跡の地下であった。彼が向かう地下には、カーマ=インドラとサウス=キャットハニーが牢の中に囚われていたイージスを救出していた。
「イージス。大丈夫か?」
「あ、ああ……」
イージスは朦朧とした意識の中、カーマの質問に受け答えをしていた。
カーマの意識があることを確認したカーマは、魔法を使う。
「〈
カーマはイージスの顔に手をかざし、眠らせた。
カーマはイージスを背負い、サウスとともに退却しようとした時、行く手を塞ぐようにしてトールが現れた。
「トール!?」
「カーマ先生。ここは私が」
サウスは右手に青色の書物を持ち、トールの前に立ちはだかった。トールの威圧感に押し潰されそうになるも、サウスはどしっと構えて戦う決意をした。
「イージスを死なせるなよ。ヴァルハラ学園の教師たちよ」
「何を言っているんだ?お前はイージスとどんな関わりがある?」
「それは言えない。だが一つだけ言うとするのならば、私とイージスが関わりがあるのではなく、私の知り合いとイージスが関わりがある。そうとだけ言っておく」
トールはそこに雷だけを残し、消えていった。
生き残ったカーマとサウスは、疑問を抱えつつ魔法学園ヴァルハラへと戻っていく。
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