第96話 カミソリ=クールガイ
魔法遺跡ドラグーン。
それは広大な七つのフィールドに分けられて、〈火竜の住処〉〈水竜の住処〉〈風竜の住処〉〈毒竜の住処〉〈金属竜の住処〉〈地竜の住処〉〈雷竜の住処〉。
これら七つのフィールドに棲む竜は、"七界竜"。その名で恐れられていた。
「カミソリ先生。そこは確か〈水竜の住処〉ですよ」
「ビビッド先生。ですがこの道を通らなくてはだいぶ遠回りになる。速く行かないと」
カミソリとビビッドは〈水竜の住処〉へと飛び込んだ。
〈水竜の住処〉
そこには無数の滝があり、湖なども水源も複数存在している。カミソリとビビッドは岩の上を走り、急いで出口へと向かっていた。あと少しで出口という瞬間、水が宙へと飛散し、湖の中から巨大な竜が現れた。
四足の足、背中には翼が生えていないものの、異常なまでに発達した尾が岩の柱を破壊する。
「魔法遺跡ドラグーン。想像以上だが……想像以内だ」
カミソリは両手を構え、竜の動きに備えていた。だが瞬きをする間もなく、後ろにいたビビッドが一瞬にして弾き飛ばされた。
(何が起きた!?)
その速さにはついていけず、何が起きたのかすら分からないほどだ。その一撃を受けたビビッドは岩にぶつかり、気絶している。
カミソリは驚きのあまり声も出ない。
「これで女は吹き飛んだ。あとは男だけだな」
そう言って現れたのは、水竜の背中にのった一人の少年。
「お前、誰だ?」
「誰だって失礼じゃないか?僕は怪盗団のNo.4。16人いる怪盗団の中では、相当上位にいるんだよ。僕って」
その少年は手に水色の水晶を持っていた。
「その水晶、見たことあるな」
「何だ。知っているなら隠す必要もないね。僕が持っているこの水晶は水竜を操ることができるんだ。だからさ、この子は僕に手を出さないんだ」
少年は水竜の体に抱きついた。それでも水竜は暴れることはしない。つまり本当に操られているのだろう。
「戦うしかないよな。やっぱ」
カミソリはため息を吐き、再び拳を構えた。
「先生。この子は強いですよ」
「仲間のためになら、俺はいくらでも命をはれる。来いよ。強いんだろ。水竜とやらは」
「その笑み。ムカつくね。水竜、あいつを殺せ」
水竜は尻尾を振るってカミソリの体を吹き飛ばす。はずだった。
「何!?」
「面倒だよな。やっぱ」
重たい尻尾の一撃を、カミソリは片手で受け止めていた。
「これが九頭竜の一人……カミソリ。だがなぜ……。お前、本気なんて出したことないんじゃないのか。お前はいつだって本気を出さない。たとえ自分が死にそうでも。なのにどうしてだ」
「自分の命とか、そういうのは正直言ってどうでもいい。あの世の方が楽しいかもしれないから。だけど、」
カミソリは尻尾を掴み、持ち上げて天井へと投げ飛ばした。
「仲間を護るためなら、本気なんて自然と出るもんさ」
天井へとぶつかった水竜は、瓦礫を撒きながら真下にあった湖へと水しぶきを上げながら落ちていく。
「ま、聞いていないか」
カミソリはビビッドの方へと歩き出した。だがふと気配を感じ、とっさに振り向いた。
「何だ?」
「まだだよ。水竜はまだ、この程度じゃ倒れねーよ」
湖の中から姿を現した水竜。だがそんな水竜に恐れることなく、カミソリは湖へと向かい、水の中に手を入れた。
「何をするつもりだ?」
「眠っていろ。水竜」
湖はカミソリが手をいれている場所から凍っていき、次第に水竜の体まで氷に蝕まれていく。
「な、何だこれは!?」
「原初魔法零一〈
「そ、そんな初歩の魔法でこの威力だと。ふざけるな」
「お前こそ、モンスターを道具にするなよ。戦うなら、自分で戦え」
氷は水竜の全身を包み込み、湖までもが凍り漬いた。だがしかし、先ほどまで水竜の背中に乗っていた少年の姿は消えていた。
「逃げられたか。まあいい」
カミソリはビビッドを横たわらせ、その隣で静かに座り込んだ。
「よく頑張ったな。ビビッド」
カミソリはビビッドの髪を整える。
カミソリはモンスターに襲われないよう、ビビッドをそばから見守る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます