魔法遺跡ドラグーン編

第92話 アタナシア=アーティファクト

 原初魔法祭は何事もなく、楽しいまま終わった。


「はーい。皆席につけ」


 カーマは生徒たちを席へと座らせた。全員が席へ座ったのを確認すると、カーマは扉の方を向いた。


「入って良いぞ」

「失礼します」


 一人の女性が入ってきた。

 黒髪を両側で巻き巻きにし、まるでお人形のような容姿であり、美しい。会って一秒でクラスの男子の大半を惚れさせ、彼女は笑みを皆に見せ足を止めた。


「皆さん。初めまして。今日からこの学校に転入して来ました。アタナシア=アーティファクトと申します。これから長い間よろしくお願いします」


 礼儀正しい挨拶に、カーマ先生も感心しているようだった。


「ではアタナシアさんを含め、授業を始めましょう。まずはアタナシアさんが来たということで、今日は特別な授業をしたいと思います」

「特別な授業?」

「皆さんは知っていますよね。ここ名門ヴァルハラ学園には四つの巨大な寮があり、その一つに魔法冒険地帯があります。今日はそこで、皆さんで冒険をしてみましょう」


 カーマ先生が指を鳴らすとともに、私たちは一瞬で知らない場所に飛ばされた。周囲は明るいが、森に囲まれており、どこまで広がっているのか分からないほどだ。

 まさかこの学校って、いつもこんなことをやっているのかしら?


「先生。ここはどこですか?」

「いい質問ですね。アニーさん。ここは魔法遺跡ドラグーンは存在する恐怖の場所です。今日は皆さんに魔法遺跡ドラグーンを目指してここを冒険してください」

「ちょ……カーマ先生」


 カーマ先生は光に包まれると、一瞬にして消えた。

 残された私たちは、ひとまず話し合うことにした。


「班を幾つかに分け、探索しよう。もし遺跡を見つけたら上空に火炎の花火を咲かせよう」

「分かった。じゃあブックの言う通り、班を分けよう」


 イージス班、イージス、アニー、ピット、ヒーリシア、アタナシア。

 イージスたちは南へと向かうことになっていた。


「まだどんな危険があるのか分からない。だから離れるなよ。皆周囲を警戒しよう」


 恐らくこのイージスという少年はリーダー的な存在なのだろう。周りの者たちが何も言わないところから、イージスという少年はなかなかに信頼されているな。


「うん。分かった」


 そしてアニー。彼女はイージスのそばにいるが、恋でもしているのか?まあアニーは補佐的な役割か。

 あとはピットとヒーリシアだが、この二人は特に何か気になることはないな。言うなれば普通といったところか。まだ魔法を見ていないから細かくは言えないが。


「アタナシア。いきなりで悪いが、この学校はそういうとこだ」

「大丈夫。覚悟の上だよ」


 私がこの学園に来た目的はただ一つ。


「よし。では魔法遺跡ドラグーンを探しに行く。行くぞ」

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