第90話 パープル=スコーピオン
地を手をつけたスモッグ。
外傷は見られない。だがスモッグの心臓には張り裂けるような痛みが走っていた。
「パープル。確かお前は痛みを操る魔法を使うんだったな……。ああ。どれも俺のオリジナルの魔法だ。対処をするには俺を殺すか、魔法を使えない結界を張るかだが、金色魔法使いであろうとそれは難しいだろうな」
「痛みなんて……ただの錯覚だろ。こんなもので、倒れていては……」
立ち上がろうとするスモッグ。だがすかさずパープルは手をかざす。
「〈
スモッグの心臓には激痛が走り、その痛みにスモッグは地に手をつけた。
「どうだ?痛いだろ。お前のその痛み、俺は何度も味わってきたんだぜ」
「この痛みをか」
「ああ。俺は子供の頃から孤児だった。だからこそ金もなく、食料もない。ただ腹だけ空いていくだけの毎日。そんな中で、俺は奴隷という道を選ぶしかなかった」
パープルは子供である頃から過酷な人生を歩んでいた。
毎日毎日奴隷として働き続け、休むことなど極稀であった。他の奴隷が過労で倒れていく中で、パープルだけは疲れも見せずコツコツと働いていた。
「なあパープル。どうしてお前はそんなにも楽そうな顔をしているんだ?」
「楽?楽じゃないさ。俺たち奴隷は富豪の家を建てるために建築をする奴隷だ。だが俺はここに来る前は狩りをする奴隷として使われ、その前は薬の実験体となった日もあった。そんな中で生きてきたから、正直ここはそれらに比べて楽というだけだよ」
「へえ。パープルはスゴいんだな」
周りの奴隷たちはパープルを師匠と慕い、じきにパープルはカリスマ性を発揮していくこととなっていく。
いつしか建築の指示はパープルが任されており、本来建築の指示を出すはずの者たちは皆のんびりと休憩していた。
「なあパープル。そんなに頑張らなくていいんだぞ」
「だがあいつらが指示するよりも、俺が指示した方が楽だし効率も良いだろ。だから俺に任せておけ」
本来六ヶ月で建つはずの家が、たった四ヶ月で完成した。その功績にパープルは目をつけられた。
奴隷商人たちは集まり、悪い笑みを浮かべて話していた。
「あのパープルとかいうガキ。上手く利用すればとんでもない価値になりますよ」
「そうだな。では今一番金を稼げると噂のあの場所に隔離してはどうでしょうか?」
「名案だな。そうするか」
後日、パープルは他の場所へと売られることとなった。
(ああ。俺はいつまでこんな奴らの言いなりにならなくてはいけないのだろう)
パープルは腕を縛っていた手錠を外そうと試みたが、あまりの固さに破壊できなかった。
「ついたぞ。奴隷」
パープルが連れてこられた場所は、巨大な一つの城。周囲は海で囲まれており、海には無数の巨大な渦が存在して船では到底近づけない。
「パープル。この城には闘技場がある。せいぜい楽しんでこい」
(ああ。そういうことか。俺はこれから死ぬことになるのだろう。これが俺の人生か。短いな)
パープルは暗い雰囲気でその城へと入っていく。案内された場所は、広大な正方形のフィールド。地面は砂岩や土で覆われており、周囲は高さ二十メートルはある巨大な壁で覆われていた。
壁の上には多くの人がおり、会場へと入っていくパープルたちを見下していた。
「さあ、今回この戦闘に参加するのはこの少年。天才的な知識を有し、あらゆる局面において持ち前の頭脳を発揮する。彼の名は、パープル=スコーピオン」
パープルは歓声に包まれた。
そしてパープルの前に現れるは、額から角を生やし、身長が三メートルを越える男。
「俺はこの闘技場のチャンピオン。今まで三百人という数の人間を殺してきた」
「そうか。で、俺は今から殺されるのか」
「ああ。死んでもらう。まあそもそも、お前じゃこの俺、白鬼を殺せないだろうがな」
白鬼は笑みをこぼし、刀を抜いてパープルへと向けた。
「そうか。俺は殺されるためにここにいるのか」
「正解。じゃあさようなら」
白鬼はパープルの首へと刀を振るう。
パープルの体には突如として電流が駆け抜ける。その直後、観客には寒気が走った。それもそのはず、無敗を唄われた白鬼が一瞬にして首を跳ねられたのだ。
「弱いな。いや、違うか。俺が強すぎたのか」
笑みを見せると、パープルは刀を握り、それを観客席へと投げた。刀が観客席に刺さると、観客席は粉々に弾け、多くの観客は血をはいて吹き飛んだ。
「死んでいけ。クズども」
殺意を向けるパープル。だがそこへ、一人の女性が現れた。
「そこまでだ。少年。私はアイリス=ヘルメス。魔法聖だ」
それからというもの、パープルはしばらく拘束されていたが、それから数年、パープルは檻から脱け出し、結果彼は死刑囚となった。
「それが俺、パープル=スコーピオンだ」
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