第89話 スモッグ対パープル

「それよりどうしてこんなところにあのパープル=スコーピオンがいるんだ?」

「お前が呼んだんだろ。で、見せたかったのはさっきの天使か」

「ああ。お前に殺されたブレイドだよ」

「そういえば殺してきた中にそんな奴がいたな」


 その発言に腹を立て、サーは剣を抜き、手を斬ろうとした。だがそこへ割って入るように、魔法ギルド所属金色魔法使いである一人の男がサーを煙で拘束した。


「君じゃこの死刑囚にはかなわない。確かアイリス聖の屋敷で囚われていたはずだが、こんなところに現れるとはな」

「お前、誰だ?」

「スモッグ=ホワイトネス。魔法ギルドの金色魔法使いだよ」


 そう言う男の首には、確かに金のネックレスがつけられていた。

 魔法ギルドの最高階級である金色魔法使い。だがそんな彼を前にしても、死刑囚パープル=スコーピオンは笑って余裕を見せていた。むしろスモッグの方がパープルを恐れていた。


「どうした。仕掛けてこないのか」

「既に仕掛けているぞ。パープル」


 地面に隙間として存在している排水溝から煙がうっすらとわき出ていた。その煙はパープル=スコーピオンの足へと絡みつく。


「〈白槍ホワイトランス〉」


 スモッグの背後に現れた槍の形をした無数の煙。


「ただの煙か」

「受ければ分かるさ。この威力を」


 槍の形をした煙は速い速度でパープルの体へと向かって駆け抜けた。煙はまるで体を貫いたようにパープルの体を突き抜けた。


「ぐはっ……。これが…………!?」

「パープル=スコーピオン。今ここで、俺がお前を倒す」



 ーー同時刻、ヴァルハラ学園内魔法ギルド簡素拠点。

 モニターがずらりと並び、多くの魔法ギルドの者たちが魔法でできたキーボードで入力などを行っていた。そんな中、一人の女性が地図が映し出されたモニターを見て気づいた。


「これは……」

「どうかした?」

「先輩。もしかしてこの反応って……」

「測定不可能な魔力数値!?」


 地図で映っていたのはパープルとスモッグが戦っている路地裏にある狭い空間。


「スモッグが向かっているようですが……戦っている可能性が高いです。しかもこの魔力は恐らくスモッグのものじゃない」

「まさか……」

「もしかしたら、スモッグは今、自分より強い敵と交戦中なのかもしれません。すぐ応援を要請しなければ」


 そう言うと、彼女はキーボードを素早く叩き、周辺にいた魔法使い並びに金色魔法使い、銀色魔法使いへと応援を要請した。


「スモッグ……。持ちこたえてくれよ。援軍が行くまでは」



 ーー路地裏の狭い空間

 パープルは足に絡みついていた煙を踏み潰し、スモッグの方へとゆっくり歩いていた。


「これが……パープル=スコーピオンか」

「終わりだな。金色魔法使い」

「ここまでか……」

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