卒業式編

第83話 別れと出逢い

 もうすぐ四月。

 一年生であったイージスとアニーはもうすぐ二年生になろうとしていた。

 そして今日は卒業式。


「今日でサンダー先輩ともお別れですね」


 そう言ったのはイージス。その隣にはアニーもいた。


「やはりサンダー先輩は魔法剣士になるんですか?」

「ああ。各地を巡る旅をしようと思ってな」

「もうお別れですか」

「まあいいじゃねーか。お前たちの世代からは色々始まるらしいぞ。だから楽しそうじゃねーか」


 確かに風の噂で流れていた。

 行事が少ない学校ではつまらない。だから新入生が入ってからは多くの行事をやっていこうとなっている。


「そうですね。ではいつかアニーとともにやりたいことを見つけて、サンダー先輩の背中を追いかけます」

「ああ。頑張れよな」


 イージスに見送られたサンダーは、門の前で待っていたサクヤのもとへと走っていた。


「サクヤ。すまん。遅れた」

「いいよ。じゃあ行こう」

「ああ」


 サンダーとサクヤはほうきに乗ると、二人で空へと飛翔した。空を飛びながら、二人は会話をしていた。


「やっぱサンダーは魔法剣士になって色んな島を冒険するのでしょう」

「ああ。一度見てみたいんだ。世界がどれほど広いのかっていうのを」

「そうか。やっぱサンダーはカッコいいね」


 私なんか……きっと君の目には映っていないんだろうな。

 前ばかり見るサンダーの目には、私という米粒のように小さい存在を見ることなんてできないだろう。

 これからはそれぞれ別の道を歩む。

 それが『卒業』という言葉の本当の意味なのだから。

 だから私はサンダーのもとから離れても、そうなっても、生きていかなくてはいけないのだろう。


「サンダー。頑張ってね」

「あ、ああ」


 あれ?

 どうしてそんな顔をしているの?

 もしかして、私の気持ちがバレちゃった?いや、そんなことはないよね。

 私はあなたに頼りっぱなしではいけないのだから。


「サンダー。もうそろそろ君の行きたい島につくよ」

「ああ……」


 サンダーがいなくても私は頑張るよ。

 もう弱い私じゃないから。

 サンダーのお陰で私は強くなれたよ。だから、


「サンダー。いってらっしゃい」


 笑顔で見送る私の手を掴み、そして顔を近づけて言った。


「サクヤ。俺とともに来い」

「駄目だよ。お互い一人立ちしないと、これからずっと生きていけないよ。だから」

「駄目なんだよ。俺はお前がそばにいてくれないと前に進める気がしないんだ。前に進むためにはサクヤが必要なんだ。だからサクヤ、これからずっと俺のそばに居続けてくれ。俺がサクヤを支えるから。だから」

「うん。私もあなたのそばにいたい」


 私、やっぱ君がいないと駄目みたい。

 けど私はそうでありたい。

 だって隣には、君が居続けてくれるのだから。

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