第82話 ようやく見つけた

 私は今まで何かを護れてきたか?

 否、私は今まで何もできていない。何も護れていない。ただ誰かに頼るだけで、私は何もしていない。

 それでは駄目じゃないか。

 私は今、戦わなくてはいけないのだから。

 私が今、戦わなくてはいけないのだから。


 リーフは刀を握ると、正面で構えて牽制する。

 だが阿修羅は刀などには怯まず、正面突破しようと走っている。既にユヅルとミルハは遠くまで走ってはいるが、阿修羅の足の速さでは一瞬で追い付けるだろう。

 なればこそ、避けてはいけない。


「立ち向かう」


 リーフの刀には風が纏われている。その風は次第に威力を増し、やがては竜巻をも生み出した。


「これが私の全力。風よ、奇跡を起こせ」


 リーフは刀を阿修羅目掛けて一直線に振るう。阿修羅はその風に圧され、さらには纏っていた火炎までもが消える始末。

 だが阿修羅は全身の筋肉を圧迫し、地面を梳りながら前へと進んでいた。


「さすがに強い……」


 リーフは阿修羅の強さに腕には既に激痛が走り、右目には汗が入って思わず目をつむる。それでもリーフは風を放ち、阿修羅を食い止める。


 あと一分でいい。たったそれだけでいい。そしたらきっとユヅルとミルハは遠くへと逃げてくれるから。そしたら十日間生き残って、ここから出てくれる…………わけないだろ。

 こんな化け物から十日も逃げられるわけがない。第一、島ごと破壊されれば終わりだ。


「護らないと……。絶対に、こんなところで負けてたまるか」


 風の威力は増大した。

 まだリーフは限界に達していなかったから。違う。リーフは限界を越えても尚、前へ進めるから。


「阿修羅。ここで倒す」


 リーフは既に力尽きる寸前。だが、それでも倒れない。


「私を舐めるなよ。私は多くのモンスターを率いる、リーフであるのだから」


 だが風は阿修羅によって弾かれ、阿修羅の突進によってリーフは吹きとんだ。


「やっぱ私……弱かった。結局何も護れない」

「そんなことはないよ」


 そこへ一人の少年が空を飛んで現れた。


「誰……?」


 失い欠けている意識の中で、リーフは少年へとそう問いた。すると少年は笑みをこぼして答えた。


「ヤマト。この島をあるべき姿へと戻しに来た」


 ヤマトは地に足をつけると、背中に差していた剣を抜く。


「一体何を……」

「一撃で沈めるぞ。阿修羅」

「ああ。やってみろ。一撃でな」


 阿修羅は嘲笑い、拳を振るってヤマトへと殴りかかった。だがその瞬間、一筋の閃光が駆け抜けて、その瞬間に阿修羅の体は粉々に引き裂かれた。


「!?」


 リーフはただ驚き、目を疑うことしかできなかった。

 ヤマトという少年は剣をしまい、リーフの方へと振り向いた。


「これで来年からいつも通りに戻るね」

「あ、ああ」


 リーフはその少年の強さに驚き、身動きをとることすら忘れていた。いつの間にか朝日が昇り、ヤマトは去り、リーフのもとへとユヅルとミルハがいた。


「リーフさん。大丈夫?」

「ああ。それより一つ気になるものを見つけた」


 そう言ってリーフが歩き出した方向には、とある石碑がぽつんとあった。リーフはその石碑にかかれている文字を見るや、驚いた。


「まさか……」

「何と書かれているのですか?私にはこの字は読めないのですが……」

「そうだな。一つ言えるとすれば、、というところだ」

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