第80話 かつての者

 どこかで戦闘が繰り広げられているとも知らず、リーフとユヅル、ミルハたちは島の中を探検していた。するとその島に一つの家屋を見つけた。


「家?」


 その家屋を怪しんだリーフは、恐る恐るその家の戸を開けた。家の中には特に何もないよう。あるのはキッチンや机、椅子だけで、一応布団などの家具もある。

 一見誰かが暮らしているようだが、ほこりを被りすぎているということは住んでいたとしても数年前だろう。


「二人とも。何かないか探してくれ。特に押し入れとかは怪しいからな」

「「はい」」


 ユヅルとミルハは押し入れの中に入るや、上段と下段に分かれて中を探し回った。

 その間に、リーフは机の下に一枚の本が貼り付けられていることに気づく。リーフはその本を手にし、読み始める。


『いつか来たるべき日のために、ここにとあることを記しておこう。それはかつて、この島で起きた事件』


 そんな冒頭から始まる物語。

 リーフは好奇心を掻き立てられ、本を読み進める。


『かつてこの島には多くの島や村から一人の者を連れてくることになっていた。それはなぜか?その理由はいたってシンプルで、十日だけ初対面の者と出会い、協力し、生き残ろうということをしていた。最初は良かった。皆楽しそうにしていたから。

 だがーー』


 突如文面は変わり、まるで恐ろしいことが書かれているかのような文体となった。


『一年に一度行われるこの行事に、阿修羅という鬼が現れた。その鬼は参加していた全ての者を倒していくや、満足げに去っていった。それからというもの、毎年この島にはあの阿修羅という鬼が現れるようのなった。

 いつかあの鬼を倒してくれる者が現れるだろうか?いや、現れることはない。

 だがきっと現れることを信じて、私は二つ、阿修羅を倒す、というよりかは封印するための武器を用意しておこう。阿修羅を水晶に閉じ込め、そしてその中へ永久に閉ざすための札。最後にその札を割るといい。そしたら札の効果で阿修羅は死ぬだろう』


 それで本は終わっていた。

 リーフは本を机の上に置くと、押し入れから出てきたミルハとユヅルはそれぞれとあるものを持っていた。


「リーフさん。謎の水晶がありました」

「僕の方には札らしきものがありました」


 二人は本に書かれている通り、水晶と札を持っていた。


「これが……その阿修羅という鬼を倒すための最後の鍵ということか」

「リーフさん。どういうことですか?」

「二人とも。これから話すことをよく聞いてくれ」



 その頃、阿修羅はあの場所で少年と戦闘を繰り広げていた。

 少年は圧倒的すぎる阿修羅によって体はぼろぼろになり、既に敗北しかけている。


「負けてたまるか……」


(俺は流星村の勇者、ドラゴニスなのだから)


 少年は阿修羅へと飛びかかる。

 阿修羅は身軽な動きで後退し、少年と距離をとった。すると少年も足を止め、後退する。


「おやおや、さすがに見抜かれたか」

「ああ。誘い込もうとしたのだろ。簡単に見抜ける」


 少年は、ドラゴニスは翼を広げると、空へと飛翔した。


「阿修羅。これからお前は、俺の速さにはついてこれなくなる」

「何を言って……」


 直後、阿修羅の腕には切り傷が刻まれた。


「見えなかった!」

「だから言ったろ。もう、俺を捉えることはできないと」

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