第78話 幼き二人

 冬が始まった。

 まだ冬が始まってから数日、世界は真っ白な景色に覆われ、パウダースノー現象と巷で言われ騒がれていた頃、多くの島や村から選ばれた一人がとある巨島へと向かっていた。


「ここが年に一度、島から選ばれた者が行かなくてはいけない島なのか」

「そうみたいですよ。ここで生き残った者は、村や島に幸福をもたらしてくれるらしいですから。ですがリーフさん、参加はエクイオスさんに任せても良かったのではないですか?」


 海を泳ぐ白丸の発言に、その背中に座るリーフはボソッと呟く。


「大丈夫だ。エクイオスよりも、私の方がこの島には向いている。だってそうだろ。この島には、万を越えるモンスターがいるのだから」

「そうでしょうか」

「ああ。ついでにこの島での戦いの謎についても調べてきてやる」


 モンスターを操る笛を持ち、リーフは島へと上陸した。そんなリーフは白丸の頭をなで、そして島の奥へと向かっていった。


「リーフ……。気をつけろよ。この島はーー」


 周囲を海で囲まれた孤島、その島に来た者は一週間ここで生き残ればいい。

 その島には果物や猛獣など、食料としては最適なものが多く存在しているはずである。


 早速、リーフは島を囲むように存在していた森の中へと入る。だが想像以上にモンスターは一匹もいなく、それに他の参加者も見つからない。

 一体どこだと歩き回っていると、森を越えた先でまるで空間に穴が空いたかのようにひびが入っていた。そこからは光が漏れ、その光の中に吸い込まれるようにリーフは入っていった。


「なるほど。ここからが本番というわけか」


 その島は異常に大きく、そしてその島には森や家屋、洞窟や地下などが存在し、果物や猛獣などの食料も十分に存在していた。

 リーフがいた場所は巨大な結晶が地面から生えている大地。周囲は森で囲まれており、そこからでも猛獣の騒がしい声が聞こえていた。


「なるほど。あそこはあくまでもここへ来るための中間地点のようなものか。にしても、ちゃんと戻れるのか?」


 リーフは背後の結晶に触れたが、リーフはあの島に戻れなかった。


「いたいた。あの人もこの戦いの参加者だね」

「どうする?倒しちゃう?」

「あの人強そうだよ」

「でもさー」


 とこそこそと話している声を聞き、リーフはその声がする方へと近づいていた。


「おいお前ら。何を話しているんだ?」

「うわー」

「待てって。別に私は君たちと戦おうとしているわけじゃないんだぞ」


 二人は冷静になるや、リーフが何の武器ももっていないことに安堵する。


「私はミルハ。双子村から来た」

「僕はユヅル。双子村から来ました」


 二人とも幼く、特に武器なども持っていなかった。


「私はリーフ。闇裂村から来た。なあ、どうして同じ村から二人も来ているんだ?本当は一人のはずじゃないのか?」


 リーフが抱えた素朴な疑問に、ミルハがすらすらと答えた。


「私たちの村は同じ名前だけど二つあるんだ。だから同じ村というよりかは、同じ名前の村から来たって方が正しい」

「なるほど」


 リーフは


「なあ二人とも。この島についてや、戦いの歴史とか色々知りたいんだ。何か知らないか?」

「「知らないよ」」

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