第69話 魔法忍者

 無数の人影を倒したが、せいぜい十名程度。まだ九十名ほどの気配は十分に感じられている。

 僕とアニーは警戒し、身構えていた。


「お前たち。もう終わりだ」


 一人の女性が現れた途端、全身を黒いローブで覆っていた者たちは一斉に動きをやめ、その女性へと視線を移している。その女性は全身を黒い包帯で巻いており、頭には余ったであろう包帯が風に揺れていた。

 その女性は僕とアニーを面白そうに見つめると、一つ笑みを溢す。


「なるほど。最近ちまたを騒がせている君たちが魔法忍者の体験を受けに来るとは、少し驚いたよ」

「いいんですか!?体験していっても」

「ああ。むしろ歓迎するよ。短い間ではあるものの、君たちを最低限強くしよう」


 そう言うと、その女性は僕とアニーを巨大な木の前へと連れてきた。


「ここは……何ですか?」

「まあ見ておけ」


 女性が木へと触れた瞬間、木には一つの扉が出現した。これは一体どういうことなのだろうか?


「まあ入れ」


 僕とアニーは中へ入った。

 案外その中は広く、暮らすには何一つ不十分がないほどに多くの設備が整っていた。

 キッチンや冷蔵庫、他にも風呂やトイレなどという設備が木の中にはあった。


「では座ってくれ」


 僕とアニーは椅子に座り、女性と向き合う形となった。


「ではまず名乗っておこう。私はクナイ=クノイチ。魔法忍者の顧問を受け持っている」

「クナイ先生は生徒たちが襲ってきた際にどこにいたんですか?」

「ああ。それならずっと君たちの背後にいたさ」

「「え!?」」


 僕はそれが虚言だと疑うが、この人が嘘をつく必要などないだろう。


「魔法……ですか?」

「当然だ。魔法を使わなければ君たちの背後に居続けることはできなかったからな」

「オリジナルの魔法ですか?」

「ああそうだとも。でなければ〈隠黙ダウト〉の魔法でとっくに見つかっていた」


 クナイ先生は紅茶を一口口に注ぐと、本題とばかりに話し始める。


「それでだ、君たち二人は魔法忍者になるわけだが、これからの修行はとても厳しいものになるが、大丈夫か?」


 僕とアニーは目を見合わせ、静かに頷いた。


「そうか。では君たちには私が直々に修行の監督をしよう。強くなりたくばついてくるがいい」


 こうして僕とアニーは魔法忍者の修行を受けることになった。のだが、それは予想以上に厳しい世界であったのだ。

 案内された場所は崖の真下。そこには巨大な滝が流れており、普通の滝よりは激しく流れている。

 そこで、僕とアニーはクナイ先生から与えられる修行を待っていた。


「ではまず一つ目の修行は、魔法を使わず滝を上れ」

「……え!?」

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