ヘルメス家編
第63話 帰宅
魔法試験は終わった。
そして今日、イージスは学校に外出届を出して学園の敷地の外にある自宅へと向かった。
ほうきにのっておよそ一時間。イージスは自分の家についた。
木造建築の真骨頂といった具合に歴史のあるその建物は、とても大きく広い家であった。イージスはその家に懐かしさを噛み締めながら足を踏み出した。
「誰か、いないか?」
「わーい。イージスお兄ちゃんだ。帰ってきたんだね」
まず出迎えてくれたのが、アーサー家六女であるシフォン=アーサー。まだ子供である。
「シフォン。元気か」
「うん。シフォンすっごく元気だよ」
シフォンのはしゃぐ姿に、僕は笑みをこぼして喜んだ。そんなシフォンを嗅ぎ付けたのか、アーサー家の番犬、タイガーベルが僕へと飛び付いてきた。
僕がしゃがみこむと、タイガーベルは僕の頬っぺたを美味しそうに何度も舐めていた。
「タイガーベル。お兄ちゃんは私に会いに来たんだぞ」
「わん。わんわん」
シフォンとタイガーベルの騒がしさを聞き付けたのか、一人の男が階段をゆっくりと降りて僕の前へと姿を現した。
右目を紫色の眼帯で覆い、腰には相変わらず立派な剣を携えている。
「ポイズン……」
ポイズン=アーサー。
彼はアーサー家長男だ。
「久しぶりだな。イージス」
「ポイズンの兄貴。確かお前、魔法ギルドに入ったからしばらく帰ってこないんじゃなかったのか?」
「ああ。あんなのつまんなかったから辞めたよ」
「何だと!?金色魔法使いにまでなったのにか!」
金色魔法使い。
それは魔法ギルドの中でも最上級の階級であり、その階級になるには相当な試練と実績を積まなければならない。
「ポイズンの兄貴。借金はどうなった?」
「何だそれは?そんなもの俺が払うものでもないだろ。第一母さんが……」
「ポイズン。そこまでにしておけ」
その発言に、思わずポイズンは口を閉ざす。
その声の主は、一階の奥からゆっくりと姿を現した。
「ムラサキお姉ちゃん!どうして姉ちゃんまで!?」
紫色の髪を揺らし、ムラサキお姉ちゃんは何かに戸惑いつつもこちらへと歩み寄っている。
ムラサキお姉ちゃんはアーサー家長女であり、今では一家の大黒柱を担っている。そんな彼女が帰ってきたということは、やはり何かがあったのだろう。
「イージス。単刀直入に訊くが、ヘルメス家に喧嘩を売ったというのは本当か?」
「喧嘩……」
ヘルメス家。
僕はその一族に覚えがあった。
確か竜馬祭の時、僕はアニーとともにクイーン=ヘルメスという一人の少女を拐った。その際、ヘルメス家の親衛隊隊長であるローゼンという男と戦った。
だがその後、ヘルメス家は一旦クイーンは僕たちへ預けることになったはずだ。だが、実際はどうだ?
「イージス。どうやらお前は、とんでもないことをしでかしたようだな」
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