第62話 偽りの笑み
スカレアは一人、校舎屋上で座り込んで空を眺めていた。
「スカレア。こんなところで何をしている」
スカレアは振り向き、そこにいた者と目を合わせた。
「ブックか。どうして僕を探しに来た?」
「探していたのではないさ。たまたま俺も、空を見たくなっただけだ」
「何それ」
スカレアは笑みを魅せた。
ブックは空を見上げつつ、スカレアの隣へと座る。
「なあスカレア」
「何?」
「これは父上から聞いたのだがな、強さとはあくまでもうわべだけのステータスでしかない」
「でも、この世界ではそのうわべだけが重視されている。だからこそ、僕はこの世界ではただの弱者と、そう決めつけられるのだろう。いや、それが事実なのだから、僕はいさぎよく負けを認めるしかないだろ」
スカレアは立てている両ひざの中に自分の顔を埋めた。
「ブック。誰だって君みたいには強くなれない。どれだけ弱点を克服しようとしても、できないものはできないままだ」
スカレアは皮肉じみたように言う。
確かにそうだ。
誰しもに弱点は存在し、その弱点は簡単には克服できない。だからこそ弱点は弱点であり続け、人はその弱点に苦しみ続ける。
「僕を放っておいてくれ。もうどうでもいいんだ」
それはスカレアの心からの叫びだったのか、そんなのは分からない。
「スカレア。君は……」
ブックは立ち上がって何かを言おうとしたが、スカレアが流す涙を見て、口から溢れそうになった言葉を閉ざすことしかできなかった。
「ブック。安心して。僕はまだ立てるから……。まだ、頑張れるから」
スカレアは涙を拭い、そして立ち上がった。
ブックへ偽りの笑顔を見せ、本音を隠して彼女は先の見えない道を歩む。
たとえそこが底無し沼だったとしても、たとえそこが三途の川だったとしても、彼女は進む。
自分を偽り続けながら。
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