第59話 魔法試験二日目

 魔法試験二日目。

 今日は実技の試験である。


「さあて、今日は実技試験を行う。順番は挙手制だ。最初にやりたい奴はいるか」


 当然、誰も手を挙げないだろうとカーマ先生は思っていた。それは僕たちも同じであった。だが、それを覆すように一人の少女は手を挙げた。


「先生。私が受けます」

「そうか。アニー、君が積極的に前に出るとは、成長したと言えば良いのか、立派になったか」

「実技とは何をするのですか?」

「では皆離れて。アニー、これか一人一人にそれぞれ違った魔法を指定する。そこで魔法展開速度や魔法の威力、あとは指定する魔法を知っているかどうか、などについて採点する。出すのは火、水、風、氷属性原始魔法の零一から零九までの魔法のみ。そして魔法をどのように発動しようと、その性質を理解して発動しているのならば合格とする」


 つまりは出される魔法の数は三十六。

 この数ならば、数名は使う魔法が被るのか。なら被っていた方が有利か?

 などと考えている内に、カーマ先生はお題を出す。


「ではアニーに使ってもらう魔法は〈纏火エクストラ〉」


 火属性原始魔法零六〈纏火エクストラ〉。

 この魔法は体に火を纏わせるという典型的な魔法だが、当然直に体に纏わせると火傷する。だからこの魔法を発動する時に必要なのは、対火属性の魔法を体に付加すること。


 アニーは手を前に出すと、そこに火炎を纏わせた。火炎は凄まじい勢いで燃え上がる。その熱に離れていても僕たちに熱が伝わっていた。

 威力は当然圧倒的だろう。魔法展開速度は解らないが、性質をよく理解している。

 これは当然合格だろう。


「では下がって良いぞ。次に受けたい者はいるかい?」

「はい」

「ではスタンプ。前へ出よ」


 スタンプはカーマ先生の前に立った。


「では君には〈氷刃ギリシャ〉を発動してもらおうか」

「はい」


 スタンプは顔には見せていないが、冷や汗をかいて動揺していた。なぜならば、スタンプは氷属性の魔法が苦手だ。

 運が悪いのか、それともカーマ先生の思いどおりなのか。


 氷属性原始魔法零五〈氷刃ギリシャ〉という魔法は、展開した魔方陣から氷の刃を飛ばす、という魔法だ。

 スタンプはまず魔方陣を展開した。それまでに二秒とかからなかった。

 次にすべきことはそこから氷の刃を出すこと。


 目の前のカーマ先生は魔法で火の布を創り上げた。その布を広げ、スタンプに言う。


「この布目掛けて魔法を撃て。当てれれば加点しよう」

「なら、お言葉にあまえて」


 スタンプは魔方陣から氷の刃を放った。だが、スタンプは放ったばかりの氷の刃を手にし、その刃を握って火の布目掛けて投げた。スタンプの投げた刃は火の布へと直撃し、溶けて水となって消えた。


「なるほど。確かにその魔法にはそんな使い方があったか。面白い」


 カーマ先生は驚嘆と関心をする。


「では次、誰かいるか?」

「はい」

「イージス。前へ出よ」


 僕はカーマ先生の前へ立った。

 僕は試験範囲内の魔法については十分に克服した。だから恐らく大丈夫。


「では指定する魔法は〈火焔クレナイ〉だ」

「……!……はい」


 驚くしかなかった。

 火属性原始魔法零一〈火焔クレナイ〉は、火属性魔法の原点とも言え、その魔法は一般的なものであった。だが逆にいえば、ほとんどの者が鍛えていない魔法でもある。


 僕は手を上に広げる。するとそこには火が宿った。

 当然、これで終わりの魔法だ。この先何かあるわけでもない単純な魔法だ。


「よし。では次は……」

「はい」

「ではスカレア。君が使う魔法は……」


 二日目の魔法試験は終わった。

 僕はただ呆然とし、空を眺めていた。


「何かあの魔法に応用技でも思い付いていたら、きっともっと良い点を取れたはすだ……」


 そして、三日目がやってきた。

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