魔法試験編
第58話 魔法試験一日目
夏は過ぎ去り、とうとう秋の季節がやってきた。
時間とは案外速いものだと感じ、僕たちは寮で静かに寝入っていた。
「お兄ちゃん」
突如、僕の脳内には謎の声が聞こえた。
その声は聞き覚えがあり、確かに妹の声であった。
僕は飛び起き周囲を見渡すも、どこにも誰もいなく、居るのは隣で寝ているアニーだけであった。気のせいかとホッとするも、気になって眠ることができない。
僕はベランダへ出て夜の月を眺めていた。
「一体……何だったのだろうか?」
「どうかした?」
そう言ってきたのは、スタンプであった。
「お前がそんなに浮かない顔をするなんて、何かあったに決まってる。何があったんだ?」
「相変わらず、怪盗は観察力には長けているな」
「当然さ」
僕とスタンプは微笑し合い、先ほどの夢で聞こえたことを話す。
「妹が夢の中で僕に呼び掛けてきた。魔法で人の記憶に呼び掛けることは可能だ。だからもしかしたら、妹に何かあったのかもしれないと不安でな」
「なら明日行ってみるか?」
「え!?」
「だが明日は魔法試験の日だ。休めるはずがない」
魔法試験の日は一日中魔法についての試験をさせられる。
普通は休暇願を出さなくてはいけないが、僕は既に何度も休んでいる。さすがにこれ以上休むわけにはいかない。
「確かにな……。なら魔法試験が終わるのは……」
「魔法試験は三日かけて行われるから、だからそれが終わったら実家に帰ってみるよ」
「ああ。では明日の魔法試験、頑張ろうな」
僕はスタンプと拳を合わせ、そして再び布団へと戻った。
一体、あの声は何だったのだろうか?それが今でも分からない。
だがひとまず、眠るしかない。
日は昇り、朝が来た。
相変わらず朝というものは鬱陶しく、どうしてか布団の中からなかなか出られない。そんな苦しみを味わいつつ、僕は布団から嫌々抜けて日の光を浴びる。
「今日は魔法試験か……」
僕は虚ろな気分のまま、今日という日を迎えてしまった。
僕は重たい足取りのまま、魔法試験場第一号室へと向かった。
相変わらず広く、一年A組の生徒四十名が全員その部屋に収まっていた。
「ではこれより、魔法試験を行う。では皆席につけ」
僕たちは皆席へつく。
魔法試験一日目は筆記。
魔法試験二日目は実技。
魔法試験三日目は戦闘。
今日は一日目なので筆記だ。
筆記では魔法の特徴や弱点、その他にも魔法の性質や展開速度などについて訊かれる。
僕は机の上に裏返して置いてあるプリントを表にする。するとそこには百問ほどの問題があった。
魔法試験筆記のルールとして、ここでは一切の魔法が禁止だ。なぜなら記憶魔法や痕跡魔法、透視魔法などという魔法を使ってカンニングをすることができるからだ。だから筆記は全て鉛筆で記入することとなる。
「では、魔法試験開始」
【第一問、火属性原始魔法の名称を答えよ】
(確か……〈
【第二問、無属性原始魔法壱四〈
(これにいたってはうろ覚えだ。速度を強化する魔法ではあるが、身体能力向上系魔法の一種であった気がする。いや……もしくは物の速度も速くできた気が……)
【第三問、原始魔法の属性はいくつある?】
(火、水、風、氷、他に五つあるから……九属性か)
【第四問、原始魔法を創ったのは誰?】
(この学園の理事長、ノーレンス=アーノルド)
【第五問、風属性原始魔法零八〈
(放つ……違う。纏う?それは違う。なら残るは弾くのみ)
そして百問ほどの問いに答え終わった。
さすがに疲れたのか、目がくらくらしている。
「イージス。試験どうだった?」
「意外と難しかったけど、まあ半分以上は正解できてると思うよ」
「じゃあ明日に備えて魔法の特訓だね」
アニーは相当簡単だったのか、まだ時間が十分ほど余っているにも関わらず眠っていた。
日は経ち、二日目。
「今日は実技だ。心してかかれよ」
魔法試験二日目。
実技試験が開始した。
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