第49話 森の少女
複数のモンスターに囲まれ、僕たちは焦りと恐怖に心身ともに絶望的な状況であった。
「モンスターたち。静まりなさい」
高い笛の音とともに、一人の少女が僕たちの前に現れた。彼女は額に一角を生やした狼の背中に乗り、笛を吹いて音色を奏でている。その音色に聞き入っているのか、モンスターと僕たちは彼女へ視線が一直線に向いている。
「初めまして。冒険者たち。私は全てのモンスターを指揮するリーフって言う。ここはモンスターの居場所だ。次また侵入すれば、容赦なく殺す」
リーフと名乗った少女は僕たちへと槍を向けた。
僕たちはスナイプ先生の指示のもと、森の中から抜けて闇裂村という少し物騒な名前の村へとやってきた。
「あなた方が依頼を受けてくださった方々ですか?」
腰の曲がった老人は、二人の若い男に囲まれて僕へと問う。だが僕が返答をしようとしたその直前、老人はスナイプ先生の顔を見ると懐かしそうな表情を浮かべた。
「まさか……スナイプか!?大きくなったな」
「お久しぶりですね。長老」
懐かしそうにスナイプは言った。
どうやらスナイプがここで育ったということは本当らしく、長老はスナイプのことを愛おしく見つめていた。
「長老。モンスターが出現したというのは一体なぜ、そして彼らは村を攻めたりしているのですか?」
「ああ。それもこの村を見れば分かる通り、つい昨日モンスターの群れに襲われたばっかだよ」
確かに村は悲惨な姿をしていた。
木でできていた家は焦げた跡なのか黒ずんでおり、村の人々は住みかを失って苦しんでいた。
「なるほど。そのモンスターの中に、少女はいましたか?」
「少女?いや、見ていないが……それがどうかしたのか?」
「いえ。いなければ良いのです」
スナイプは何か考え事をしているように見えた。
そして夜になり、僕たちは外でキャンプのように過ごしていた。薪を焚き、家のない中皆で温まっていた。
だが一向にモンスターは来ない。
「そういえば長老、この森を挟んで村があったはずなのですが、その村には被害があるのでしょうか?」
「ああ。あの村な」
なぜか長老は呆れたように頭を抱え込んでいた。
「行くのは良いが、くれぐれも気を付けろよ。あの村は危険だからな」
「ああ。解ったよ」
スナイプ先生は立ち上がり、村の人たちを見つめながら僕たちとともに先へ進もうとした。
「スナイプ先生。その村へは僕たちが行きますから。だからスナイプ先生は留守番していてください」
「いや待て。俺も」
「大事な故郷なんですよね。目を放すのが心配なんですよね。だったら僕たちを頼ってください。たとえ先生であろうと、生徒に頼らないと時に苦しい時もありますから」
「やはりイージス、お前はあいつの息子だな」
何か呟いた気がしたが、上手く聞き取れなかった。
「イージス。託したよ」
「はい。お任せを」
僕はスナイプ先生から地図を受け取り、アニーとイスターとともにその村へと進む。
「頑張れよ。イージス=アーサー」
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