魔法狩人編

第48話 闇裂村へ

 既に月日は経過して、八月一日。

 いよいよ夏休みが始まった。


「イージス。買い物に行きたいんだけどさ、お金がなくて困ってるんだよね」


 ロボットであるイスターは、お金の入っていない財布を僕へと見せた。

 イージスは人の増えた寮を見渡し、決心した。


「クエストに行くか」


 クエスト。

 それは人から人へと依頼されるお願い事のようなもので、報酬は物やお金であり、報酬がないものも一応あるにはある。


「じゃあ魔法ギルドに行ってクエスト見に行こう」


 僕はイスターとともに魔法ギルドへと向かった。

 魔法ギルドは全てのクエストを管理しており、報酬や何もかもを預かっている。だからクエストをクリアすれば魔法ギルドからその報酬受け取れるというわけだ。


 僕とイスターはクエストが貼られているクエストボードを見ていた。


『フライドフィッシュ十二匹採集(報酬、二百コロン)』

『レッドオーガ三十体の討伐(報酬、五千コロン)』

『〈至急!!〉突如現れた巨龍の討伐(報酬、三十万コロン)』


 どれも討伐系や採集系が多いらしい。

 そんな中、イスターは依頼書をクエストボードから剥がして僕にアピールするように見せてきた。内容はと言うと、


『突如現れたモンスターの討伐(報酬、一万コロン)』


 一見簡単そうなクエストではあるが、どんなモンスターが現れるのかは解らない以上、行くのは危険である。

 だがイスターはこのクエストを受けたいらしく、僕はその依頼書をさらによく見る。


「場所は闇裂村やみさけむら?知らない名前だ」


 初めて聞く名前に首をかしげるも、イスターはこのクエストを受けたいと、そう何度も目で訴えかけてくる。

 どうしようか迷った挙げ句、このクエストを受けることとなった。明日、この闇裂村という場所へ行こうと思ったのだが、その前に魔法狩人の先生へ休暇届を出さなければ。


「アニー。実はクエストで闇裂村っていう場所に行く都合上しばらく魔法狩人の体験見学休まなくちゃいけないんだよね。それでアニーも一緒に来る?」

「うーん。ちょっと先生に聞いてみる」


 そしてクエスト当日。

 僕はアニーとイスター、そして魔法狩人の先生であるスナイプ=ハンター先生とともに闇裂村へと来ていた。


「いや、何で先生まで来てるの?」


 僕は思わずそう言った。


「実はここは俺の故郷なんだ。だからつい心配になって来てしまったというわけだ」


 確かに心配というのは解るが、わざわざ一緒に来なくても、などと思っていると、山道の中、脇の木々を掻き分ける音が響く。


「武器を構えろ」


 スナイプ先生は咄嗟に弓を取り出し、音のした草むらへと向けた。

 そこから一匹の狼が現れ、アニーを食おうと駆け抜ける。だがスナイプ先生は息をさせる間もなく頭を撃ち抜き、見事討伐した。


 だが、それだけでは終わらなかった。


「スナイプ先生……。周り……囲まれ過ぎでしょ」


 四方八方をモンスターというモンスターに囲まれ、とうとう身動きがとれなくなっていた。


「これは……まずいね」

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