第43話 始まったのは終わりの予兆
「僕に何を要求する?」
「お前も一応人質だ。俺たちのリーダーは危険な存在だ。だから俺のようばしたっぱは魔法ギルドが所有する牢獄へと容れられた。だがそんな俺たちとは違い、リーダーはノーレンス=アーノルドが所有するとされている牢獄、《百年牢獄》に囚われている。だからお前には、ノーレンスとの交渉の材料になってもらう」
なるほど。リーダーを牢獄から出すためだけに、この会場を囮としたか。だがこの会場には強い魔法剣士が大勢いる。
「一つ言い忘れていたが、魔法剣士は全員拘束済み。あとはお前らだけだ」
スカーレットは大人しく座り込んだ。
「良い判断だ。イージス、お前は俺とともに来い。ノーレンスと交渉するまでは生かしておくよ。さすがに自分の学園の生徒を見捨てることはしないだろうからな。いい囮になってもらうぜ」
オウルは僕へと手をかざすと、風が絡み付いて僕はそのままオウルの方へと吹き飛んだ。そのままオウルの手の中に捕まった。
「さあて、じゃあ大人しくしてもらうぞ」
オウルは僕を捕まえたまま、多くのモニターがある部屋へと入った。僕はその部屋の隅に投げ捨てられ、オウルは受話器を手にしてどこかへと電話をかけている。
「もしもし。ノーレンス=アーノルドですが、ご用件は何でしょうか?」
「ノーレンス。お前の生徒、イージスは捕まえた。返してほしければ、牢獄に捕らえている俺たちのリーダー、ハイエンドを今すぐ解放しろ」
「なるほど」
そう言うと、ノーレンスの声はしばらく聞こえなくなる。
何か考えているのか、この状況で手の内をなくしたのか、ノーレンスは思考を巡らせているのだろう。
やけに静かな時間が流れる中、とうとうノーレンスは口を開いた。
「解った。場所はどこだ?」
「魔法剣士祭の会場だ」
僕はその質問に疑問を呈したくなった。
僕が魔法学園の敷地の外に出れているのは、先生に外出届を出しているからであって、その書類を理事長も目にしているであろう。というのに、なぜか理事長は意味のない質問をした。
「そこにはイージス以外には誰もいないか?」
「ああ」
「なるほど。多くの人質がいる中で我が校の生徒を選んだか。頭はキレるようだな」
「どうせ一般人でも救ったろうに」
オウルは勝ち誇ったかのような笑みを浮かべている。
「では十分後、魔法剣士祭会場の入り口で待つ。あとはそちらの好きにしろ」
「ありがとさん」
オウルは電話をきる。
すぐに僕の方を向くと、オウルは僕の心臓部へと一つの種を植えた。
「あとは芽が出るのを待つのみ。とは言っても、どうせすぐ開花するがな」
「花でも植えたか?」
「ああ。せ詳しく言えばそれは呪花と呼ばれる花の一種でな、その花を植えられた者は数分で芽が出て、そして一瞬で巨大化し、周囲のものを飲み込みながら成長する。いわば悪魔の花さ」
つまりこいつは、約束を破ったということだ。
まあそもそも、こんな罪人が本当のことを言うなど考えていなかったがな。
「子供の魔力程度じゃ二十分後に芽が出るか…………」
オウルは僕を見るや、開いた口が塞がらないと言った具合に口を開いて目を大きく開けて驚いていた。一体何に驚いているのかと自分の心臓部を見ると、そこからは既に芽が出ていて、その芽はみるみる巨大化していく。
「う、嘘だろ……」
巨大植物に押し潰されたオウル。だがそれでも巨大植物は止まらず、巨大化を続けていく。
やがては会場全体に行き渡り、壁を破壊してとうとう会場を覆った。
荒野にいたスカーレットはすかさず剣を抜き、襲いかかってくる巨大植物を斬りつつ周囲を見渡している。
「何が起きている!?」
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