第40話 花占い

 なぜかそこにはノーマンがいた。

 ノーマンは僕が魔法学者になった時に出会った魔法園芸士だ。彼女は密売組織に捕まっていたが、何とか彼らから逃がし、今ではいつも通りの学園生活を送っているはずだった。

 だがしかし、ここは魔法学園の敷地の外。なぜこんなところにノーマンがいるのだろうか?


「ノーマン。どうしてここに?」

「私はもう就職したんだ。だから既に学園も卒業したよ」


 僕はのけ反るくらい驚いた。

 卒業するにはそ一つの職業を先生に認められる必要がある。つまりは、ノーマンは四年生にして六年生を上回ったということだ。


「じゃあ今は仕事中?」

「うん。この会場の外の花の飼育を担当しているんだ」


 均等に並べられた花壇には、優しく育つ花が楽しそうに伸びている。


「私のことよりもさ、どうして君はそんなに落ち込んでいるの?」


 さすがにバレていたらしいな。

 僕は覚悟を決め、渋々そのわけを話した。


「なるほど。じゃあそのサンダー先輩っていう人を襲った人を探したいんだね」

「ああ。何か方法はないか?」

「魔法園芸士の私にそれを聞くのかい?」

「無理か?」

「まああるにはあるが、それは信憑性に欠ける。それでもいいか?」

「ああ。構わない」


 そう言うと、ノーマンは両手を合わせ、魔方陣を形成した。


「この花を持って」

「あ、ああ」


 ノーマンから差し出された一輪の花を持つ。

 その花は真っ白な色をして、茎までもが真っ白だ。まるで絵の具を塗り忘れたかのようなただの画用紙。


「じゃあその花を持ちながらこの魔方陣に手を当てて」


 ノーマンが創り出した魔方陣は宙に滞在したまま動かず、僕はその魔方陣に花を持っている右手をかざした。


「探している人のことを脳内で考えておいてね」


 言われた通り、僕は脳内で何度も「サンダー先輩を襲った人は誰?」とそう唱えた。

 何が起こるのかと期待していると、魔方陣が青く光り出した。すると魔方陣が消え、手に持っていた花も青色に染まっていた。


「なるほど。犯人は男だね」

「どうして解るんだ?」

「さっきの魔方陣は花占い用の魔方陣でね、今回は人探し用の系統の魔方陣を使った。赤く光れば女、青く光れば男、黄色く光れば子供で、緑色に輝けば知り合いで、白色のままだったら人ではない何かがやった、もしくはそんな者はいないのどちらかになる。まあ他にも色はあるけどね」


 花占いについて語るノーマン。

 だが青く光っただけでは、犯人が男という情報しか解らない。それに信憑性が薄いというし、どうなのだろう?


「これを何度もやれば、犯人の特徴が見えてくるよ」

「何度も!?」


 それからはなかなかに地獄だった。

 色んな色が出るのは良いものの、時々色が被るのはガチャで同じキャラが出た時と同じ怒りが目覚めた。

 だが案外速めに止め、犯人は男の魔法使いで、そしてまだこの会場内にいるらしい。


「なるほど。なら……」

「犯人に目星はついたの?」

「ああ。大方の予想はついた。その犯人を探してくる」

「頑張ってね」

「ああ。絶対に捕まえる」


 僕は再び会場内へと走り、そしてサンダー先輩が眠っている部屋へとついた。

 既に治癒士はいなく、サクヤ先輩が心配そうにサンダー先輩を見守っていた。怪我は治っているはずだが、サンダー先輩は一向に起きる気配がない。まるで死んでいるかのように。


「サクヤ先輩。サンダー先輩はまだ目覚めないんですか?」

「ああ。どうやらサンダーは、呪いをかけられている。その呪いが解けなければ、サンダーは試合に参加できず、負けとなる」

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