魔法剣士祭編
第39話 枯れた花
もうじき開かれる魔法剣士祭。
本来はもっと前に開かれる予定であったが、会場が爆破予告を受けたため、一ヶ月ほど延期になった。その一ヶ月で爆破予告をした犯人を探したが、結局犯人は見つからなかった。
その出来事をニュースで垂れ流して聞き、イージスは寮の部屋の中で新しいルームメイトを紹介していた。
「スタンプ=キャットスターです。よろしく」
「ワタシはイスターです。よろしく」
一人の少年と一人の機械。
またイージスたちの部屋には、ルームメイトが増えました。
「でも良かったよな。ブラックキャットの件、全部ノーレンス理事長が色々してくれたんでしょ。でもブラックキャットとして情報収集はできなくなったけどね」
「まあゆっくり見つけるよ。両親を騙した大泥棒を」
「いつか捕まえような」
ブラックキャットは既に表舞台からは姿を消した。
これで世界からは怪盗はいなくなり、恐らくスタンプの両親を騙した悪党も安堵しているのだろう。
だがいつか彼らを捕まえる。
「それにして増えすぎじゃないか?」
今までこの部屋にはイージス、アニー、スカレア、ブックしかいなかったが、竜騎士騒動の時にやってきたクイーンや、今回の怪盗事件でやってきたスタンプとファイスターと呼ばれる戦闘機械のイスター。名前はへファイスターの下四文字をとってイージスがつけた名。
三人もルームメイトが増え、賑やかになったその部屋。そんな部屋に一人の女性が走っていた。
「イージス」
荒い呼吸とともに、扉が勢いよく開けられた。
「サクヤ先輩!?」
「今は事情を話す暇すらない。すぐに私とともに来てくれ」
ーーそこは魔法剣士祭会場の救護室
サクヤ先輩とともに、僕は救護室にいた。
その部屋に、一人の男は身体中に傷を負って魔法治癒士たちの治療を受けていた。
「サンダー先輩!」
僕は驚きを隠せかった。
サンダー先輩は学園の魔法剣士の中でも最も強い魔法剣士のはず。そんな彼が、ここまで怪我を負っている。
「イージス、今は魔法剣士祭という魔法剣士の大会が行われている」
「他の魔法剣士に負けた……ということですか?」
「いいや。サンダーが負けることはない。サンダーは奇襲を受けたんだよ。そうでもなければ……サンダーは…………」
サクヤ先輩は胸を強く握りしめていた。
とても苦しそうに、サクヤ先輩は怪我だらけのサンダーを見て悲しんでいる。
僕は一人治癒室から出て、魔法剣士祭会場の外に咲く何万本もの花を見ていた。
どの花も優しく咲き、だがちゃんと強く咲いている。そんな美しさと強靭さが混じったその花を羨ましげに見ていた。
「僕もあんな風に強くなれたのなら……」
「迷っているのですか?イージス」
聞き覚えのある声だった。
その声は柔らかく、そして温かみがあり、ゆっくりとした喋り声だった。
「ノーマン!」
「久しぶりですね。イージス」
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