第37話 救出

 僕たちは戻ってきた。

 予想通りの反応なのだろうか、ルビー先生は二人を見て驚いている。それもそのはず、一人で宝石が隠されている城に行き、帰りはなぜか三人になっているのだ。驚かない方がおかしいだろう。

 とは言っても、どう説明すべきだろうか?


「あれ!?どうしてクイーンがイージスと一緒にいるの?」


 アニーは驚いたように聞いてきた。


「まあ色々あってな。それより今はスタンプの救出が最優先だ。急いで向かう。クイーン、頼んだ」

「分かった。でも場所が分からないかあ移動できない」


 転移の魔法は場所が分からないと使えない。それは魔法基礎の授業で教わったことだ。

 だが実際、僕もその牢獄の場所は知らない。

 知っているかもしれないのは、ルビー先生だけだが、場所を教えてくれたところで、外の世界を知らないクイーンが転移するのは無理なのではないか?などと思考を巡らせていると、一つの疑問が頭に浮かぶ。


「なあ。どうしてクイーンは僕がいる場所に転移できたんだ?」


 それはおかしなことだった。

 どうしてクイーンは僕がいる場所を知っていたのか。それはルビー先生に訊かなければ分からない。だがクイーンは知っていた。その理由は明白だ。


「このレンタル魔法は人を指定して転移することもできる。ただしレンタル魔法の使用者がその者と関わりがなければ無理だけど……じゃあイージスがこのレンタル魔法を使えば助けたい人の場所に……」


 何だ。意外と簡単なんじゃないか。


「クイーン。転移の札を貸してくれ」

「分かった」


 クイーンは腰のポーチから二枚の札を取り出した。その札には"移"の者はが刻まれている。その札を渡されると、僕は一人、その札を天に掲げようとしたーーが、その直前でへファイスターは僕の腕を掴んだ。


「ワタシも行かせて」

「へファイスター!?」

「ワタシはキミに救われた。だからワタシはキミの力になりたい。それじゃ駄目かな」


 これから行く場所は危険な場所だ。

 もしかしたら二度と戻ってこれないかもしれないし、もしかしたら死んでしまうかもしれない場所だ。そんな危険な場所に、へファイスターを連れていくわけには。


「待っていてくれないか。必ず戻ってくるか。それにさ、君に名前もつけていないのに死ねるかって。だからへファイスター、待っていてくれ。僕は必ず、戻ってくるから」

「分かった。でもヤクソク、必ず戻ってきてね」

「ああ。友達、たくさん紹介するよ」


 その札を天に掲げると、純白の光が周囲を包み込み、その光に包まれるように僕はとある場所へと転移していた。

 果てしない火炎が広がる空間に、僕は《夕焼けの剣》を持ってそこにいた。


「マッテイタゾ。イージス=アーサー」


 そこにいたのは、巨大な魔葬巨悪魔ゴ・ゴーレム

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