第29話 ブラックキャット=
「ノーレンス=アーノルド!?まさか……怪盗を捕まえるのは私が先だというのに……」
謎の女性はノーレンスに鋭い視線を送っている。だがノーレンスがこちらを振り向いた瞬間、僕の腕を引っ張って人混みの中を掻き分けて進む。
「イージス。ここが私の別荘だ。状況が掴めていないと思う。だからここで話をしようか」
彼女が足を止めた場所は、黄金の屋敷の前。
やはりこの街には黄金の家しかないらしいな。
「では座ってくれ」
黄金の家の中はやはり黄金でできていた。眩しく輝く黄金の家具に、神々しく光る階段や扉、そして今僕が腰かけた場所は、黄金で創られた固そうなソファー。
こんなソファーに座るのは鉄に座るのと同じではないのか?などと思いつつ腰かけると、案の定、ソファーであった。何が言いたいかというと、黄金でできているはずなのに柔らかい。
これも魔法なのだろうか?
「まずは自己紹介から始めるわね。私の名前はエリザ=エリザベス。あのスタンプと同じ魔法怪盗をしている」
「ずっと気になってはいたのですが……エリザさんの目は魔法とかで色を変えているんですか?」
「いや。この目はもともとこういう色をしているのよ。でもイージス君、そんなに見つめられると、さすがに照れちゃうよ」
「あ、すいません」
すかさず視線をエリザさんの美しい瞳から逸らし、今度は室内の家具に視線を向けて話をする。
「これ…………総額いくらくらいなんですか?」
「ああ。実はこれ全部盗んだ物なんだよ」
「え!?」
駄目だ。全く理解できない。
まるで脳内に電流を流されて思考を止められたような、そんな感覚が脳内の思考を遮っている。
「冗談……ですよね……?」
「違うよ」
まさかの即答。
もしかしてエリザさんがブラックキャットなのか!?
「まあそんなに驚くのは想定内だよ」
「でも嘘じゃないんですよね……」
「実のところを言うとね、魔法怪盗になると、どれくらいの見込みがあるのかを最初に試験されるの。その試験はもちろん怪盗。その時は結構楽しかったよ」
「そこで盗んだ物がこの家にある物ですか?」
「うん」
一瞬エリザさんがブラックキャットなのだと疑ってしまった自分を心の中で殴り、そしていつの間にか話は本題であるブラックキャットの話に変わっていた。
「最近出没しているブラックキャット。ブラックキャットの性別は解っておらず、その正体はもちろん解っていない。だが一つ言えることは、ブラックキャットは魔法学園で魔法怪盗についての教育を受けた者で間違いない」
「だから理事長も来ていたんですね……」
「ああ。だが実際、理事長が来たせいで状況はピンチになった」
「どういうことですか?」
間を空け、エリザさんは口を開いた。
「ブラックキャットは、スタンプ=キャットスター。彼だよ」
「は!?」
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