第28話 始まる怪盗劇

 書き置きに書かれていた内容はこうだ。


『明朝七時。

 ゴールドタウンのゴールド博物館にて、魔法によって生成された純金でできた指輪ーー《天使の涙》を奪うと予告した。今日中にゴールドタウンへ来い。あとはそこで話す』


「全く、勝手な話だな」


 僕はほうきに乗って空を飛び、一時間ほどかけてゴールドタウンという名前の街へと向かった。

 道中、ほうきに乗った魔法使いや竜に乗った魔法使いに多く遭遇した。やはり百以上の魔法使いを派遣したというのは本当らしい。とは言っても、そう簡単に捕まえられるものだろうか?


「やっとついたか……」


 ゴールドタウン。

 そこは名前の通り見渡す限りが全て黄金で創られていて、黄金の家や黄金の屋敷は当たり前のようにそこにあり、もちろん内装も黄金であるらしい。

 もしこんな夢のような場所で暮らせるのなら、一体何十億払えば住めるのだろうか?


「そう言えばブラックキャットを捕まえに来たんだ」


 危うくここに来た目的を忘れるところだった。

 速くスタンプと合流しなければ。


「おい少年。止まってくれ」


 背後から聞こえた女性の声。僕は振り向き、その女性の顔を眺めた。

 整ったその容姿、青い瞳と赤い瞳のオッドアイから奏でられるのは、まるでお姫様のような優しい風貌であった。


「何ですか?」

「君もブラックキャットを捕まえに来たんですよね」

「はい……。まあ」

「なら、私に協力していただけませんか?」


 とそこへ、


「イージス。ようやく来たのか」


 颯爽と現れたのは、スタンプ=キャットスター。

 一度は目の前にいる謎の女性に困惑はしつつも、すぐに状況を理解したのか、一度閉じかけた口を開く。


「おやおや。先輩じゃないですか!どうしてこんな所に?」

「まさか、へえ。スタンプ君。君もブラックキャットには興味があったのね」


 僕を間に挟んで、スタンプと謎の女性は話している。

 明らかに僕が邪魔だろう。と思い、スタンプの背後へと行こうとするも、女性は僕の腕を掴んだ。


「スタンプ。悪いけどさ、この子は借りてくよ。ブラックキャットを捕まえるのは私だから」

「ちょ……それは…………」


 スタンプが止めるのを無視し、謎の女性は僕の腕を掴んだままどこかへと足を進める。気になって振り向いてみると、スタンプは飽きれと諦めが混じったため息を吐き捨て、どこか遠くを見ている。


「イージスって言ったね」

「はい……」

「じゃあ今日一日よろしくね」

「は、はい……」


 名も解らない女性にいきなり連れられ、正直状況は一切呑み込めていない。

 全く勝手な者が多すぎる。とは言え、今日、ブラックキャットは捕まるであろう。

 なぜならば、ここには名門ヴァルハラ学園の理事長ーーノーレンス=アーノルドが来ているのだから。


「なぜ彼が……!?」


 通りすがりにそれを見つけた彼女の手は、少し震えていた。

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