魔法怪盗編
第27話 魔法怪盗
ーー魔法怪盗
それは悪とも忌むされき存在ではあるが、時に正義として名を轟かす百面相を有した魔法職であった。
世界に存在する様々な宝石や財宝を求め、魔法怪盗は世界を駆け巡りし者たちであった。
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「今日のニュースです。シルバータウンにて《天使の雫》が盗まれるという事件が発生しました。《天使の雫》はシルバータウンで最も貴重とされている美しい宝石であり、その宝石は今までずっとシルバー博物館に展示されていました」
テレビを見ている僕とヘルメスは、口に豚肉を運びつつ、女性アナウンサーの声を聞いていた。
「犯人は自らをブラックキャットと名乗り、これまでに数ヵ所の都市や街で盗みを働いている模様です。ですが既に魔法ギルドが動いているいうで、ブラックキャットが次に予告したゴールドタウンには、百以上の魔法使いが派遣されるそうです。これで朝のニュースは終わります」
女性アナウンサーの一礼とともに終わったニュースを見終わり、少なからず魔法怪盗とはカッコいいと思ってしまっていた。だがしかし盗みは犯罪であり、絶対にしてはいけない行為だ。
箸を進める手が止まっているのを見て、ヘルメスは心配そうに聞いてきた。
「イージス。大丈夫?」
「ああ、少し魔法怪盗という職業が気になっただけだ」
「でも凄いよね。よく今まで捕まらずに盗みを続けられるよね。たとえどれだけ魔法に自信があっても無理だよね」
「だが今回は百以上の魔法使いを派遣するからな。さすがに今日がブラックキャットの最後の舞台になるだろうな」
魔法手帳でブラックキャットのニュースを確認しつつ、時計に目を配ると既に九時。だが今日は土曜日ということもあり、僕はヘルメスとともに寮にいた。
竜馬祭の出来事の甲斐もあってか、しばらくヘルメスは僕たちが預かることになった。このことにはヘルメスの父親は賛成しているらしい。
「イージスお兄ちゃん。アニーお姉ちゃんはどこに行ってるの?」
「アニーなら今エスト先生っていう魔法竜騎士の先生に竜を返しに行ったよ」
「イージスお兄ちゃんは行かなくてもいいの?」
「僕は既に事情そ説明して話したからね。あとはアニーに任せるよ。それにまたヘルメスを奪いに来たら護らなきゃだしな」
ヘルメスと話に花を咲かせていると、誰かが玄関を開けてこの部屋へと入ってきた。
「アニーが帰ってきたか」
扉を開けて入ってきたのは、アニーではなく同じクラスの男の子であった。アニーがすぐ戻ってくると思って鍵を閉めなかったのが間違いだった。
「スタンプ。何の用だ?」
彼はスタンプ=キャットスター。
そう言えばスタンプの魔法職は魔法怪盗だった気が……。
まあそもそも魔法怪盗とは多くの人を楽しませるイリュージョンをしたりと、美しい魔法を見せたりとする職業であり、盗みをするというのはただそのイリュージョンを上手く使っているだけである。
「イージス。俺と一緒にブラックキャットが出ると噂されている街へと行かないか?」
「嫌だ」
当然だ。
ゴールドタウンはここーー空中に浮かぶ巨大な城ーー名門ヴァルハラ学園からは遠くはないが敷地の外。
「どうしてだ?」
「だってイージス、最近何かと色々騒がせてるでしょ。だからブラックキャットも捕まえちゃんじゃないかなって思って。もちろん協力代として、ブラックキャットの懸賞金である一億の内、百万をやろう」
「いやいや。そもそも捕まえられるわけなくないか?」
「その時は、その時だ。イージス、もし誰かが捕まえそうになったら、お前が俺をーー」
お前が俺をーー
スタンプはその後の言葉に詰まり、口を閉ざした。
どんな言葉を言おうとしていたのか少し気になってはいたが、スタンプは書き置きだけを残してすぐに去ってしまった。
スタンプが去った後のテレビには、ブラックキャットのニュースが流れていた。
「ヘルメス。アニーに伝えといてくれ。ブラックキャットを
そう言い残し、僕は書き置きに書かれている場所へと足を進めた。
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