第25話 戦いの火花
僕たちは竜馬祭での優勝は諦め、ここ二番目の島で身を潜めて海底へと潜ろうとしていた。
「アニー。そもそもの話なんだが、どうやって海の中に潜るんだ?海に出る時は必ず外から見られちゃうだろ」
当然だ。
海から僕たちが身を潜めている森からまでの距離は、少なくとも十秒はかかる距離だ。もし十秒も外から見られるようになっていたとしたら、さすがに捕まえられてしまうのがオチだ。
「イージス。私にはかんぺきなプランがある。なぜならば、原始魔法を一から百まで全属性で全て覚えている私に、抜かりはないよ」
「全て!?」
原始魔法はアニーの言う通り一から百まで魔法が存在し、属性は九属性存在している。つまりは九百という数の魔法が存在しているわけであり、そのどれもを覚えているのはさすがに条規を逸している。
「そう驚くことでもない。魔法とは勉強と同じだ。勉強すれば『魔法とは何か』、そんな難しい問いの答えも薄々勘づいてはくるものだ。だからこそ、
アニーは自身に手をかざした。
「〈
そう唱えた瞬間、アニーの姿はまるで霧の中にでものまれたかのように姿を直視できなくなっていた。クイーンもそれに驚いている。
見えないというのは、それだけで武器になるが、とは言っても見破る魔法などないのだろうか?
「イージス。君にも同じ魔法をかけた。これで私の姿も見えるだろう」
「確かに、見えるな」
「この魔法の欠点としては、同じ魔法を使っている者を見ることが可能だ。つまりは、同じ魔法を使われれば見つかるという不完全な魔法だ」
「ならまずいんじゃ……」
「安心せぇ。私は原始魔法を全て
「うん。任せたよ。アニー」
アニーはクイーンとともに同じ魔法をかけたであろう竜に乗り、海へと駆ける。僕もアニーの後を追い、相棒のシルヴァーに乗って大海原を駆け抜ける。
「イージス。もうじき潜水する。息をたっぷり飲んでおけ」
「ああ。解ったぜ」
僕は深呼吸をして呼吸を整え、再び息を飲む。がーー
「〈
海面が揺らぎ、水が線上になって僕らへと絡み付いた。その水は密度が凝縮されているからかなかなか抜け出せず、僕とアニーの竜はいとも容易く捕まってしまった。
魔法で見えなくなっているはずが、どうやら同じ魔法を使っている者がいたらしい。
「逃がすわけないだろ。クイーン=ヘルメスは返してもらうよ」
青い竜に乗った一人の男ーー彼は竜の頭の上に立ち、僕たちに手をかざしている。
やはり僕たちを捕らえたのは彼であろう。
「なぜ彼女を狙う?」
「当然だ。彼女はヘルメス一族の重要な跡取りである。こんな危ないところには行かせないよ。
それじゃまるで拷問ではないか。
「お前らは何だ?」
「俺たちはヘルメス一族の親衛隊。そして俺が、その親衛隊隊長、ローゼン=クロッツだ」
ローゼンは手を僕らへとかざし、線上にした水をまるで自分の手足かのように操り、クイーンに水を絡ませてクイーンを簡単にも奪ってしまった。
「クイーン様。逃げては駄目ではありませんか。ですがまさか原初魔法祭の魔法コンテストで現れた少年、その彼が起こした騒ぎに乗じて逃げてしまった時はさすがに驚きましたよ。目を疑いましたからね。ですがもう、二度と外へは出しませんがね」
「外道がっ」
ローゼンのお伽噺でも話しているかのような口振舞いに、アニーは憤怒の眼差しを向けている。
「ローゼン。クイーンは返してもらうよ」
「おやおや。どこかで見たことあると思ったら、まさかのアニーお嬢様ではありませんか。まさかヘルメス一族と戦うとでも言いたいのですか?」
「きっと父と母ならば受け入れてくれるだろう。だからここで、お前を撃つ」
「どうやって?その縛られている状態で何ができる?」
嘲笑しながらの話に、拳が熱くなるのを感じる。
この男は、ローゼンという男だけは絶対に許せない。とは言っても、水の錠に縛られて動けないのでは本末転倒である。
「〈
火炎が水を蒸発してアニーを縛っていた水は消え去った。
水から解放されたアニーは腕を回し、全身に纏わせた火炎でローゼンを威嚇する。
「ローゼン=クロッツ。ヘルメスは返してもらうぞ」
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