第24話 竜馬祭・転
本来、三つ目の島で休息をとるのが速く一周できる選択肢である。だがしかし、一つ目の島での休息は、優勝からほど遠く離れることを意味する。
「アニー。僕を置いて先に行け。でなきゃ、優勝できなくなるぞ」
「大丈夫。私はイージスと一緒にゴールする。それにさ、誰かが困ってたら、手を差し伸べる。そんな君に憧れたから、私も少しは見習いたくなったんだ」
僕は思わず照れ笑いを浮かべ、視線をアニーへと移すと、なぜかアニーは鋭い視線を空へと向けていた。
「アニー。どうしたの?」
「おかしいと思わないか?どうして一つ目の島に、こんなにも魔法竜騎士がいる?」
空にはまるで都会の人通りのように竜が空を飛び交っている。まるでここで何かを探しているような、そんな感じがしてならない。
少し冷たい空気が漂う中で、アニーは魔力を回復させる薬草を採取しに向かった。その間、僕は二匹の竜とともにこの森の中に滞在する。時折聞こえる足音に肩をびくつかせながらも、アニーが帰ってくるのを今か今かと待ち構える。
「だがしかし……やけに竜が多いな……。というか、本当にこいつらは参加者なのか?」
僕の脳裏には様々な考えが過るも、そのどれもがこじつけと言わんばかりの虚構であった。
「はぁぁああ。疲れた……」
重たい体を寝かせ、襲いかかる睡魔を弾き返し、何とか眠らずにアニーを待つ。だがさすがに限界が来たのか、僕はゆっくりと目を瞑ったーーが、激しく奏でられた爆音で僕は目を覚ました。
「何だ!?」
遠くの方を見ると、どこかからかは解らないが、さっきの爆発によって発生したであろう爆煙が空を舞っていた。
「これは……シルヴァー。いつでも飛べる準備をしておけ」
僕は起立し、周囲に細心の注意を向ける。
一体あの爆煙が何かは知らぬが、それでもあの爆煙はこの島で何かが起きたと言うことを暗示させているに違いない。
「アニー。生きていてくれ」
じっとはしていられず、僕は自分の竜の背中に乗り、アニーの竜を引き連れて空を飛んだ。だがそれが間違いだった。
空を飛び交う無数の魔法竜騎士は、僕を見るや、すぐさま魔法で攻撃を仕掛けて来た。
「〈
火の矢が飛んでくるも、それをアニーの竜が足で掴んで背後を飛ぶ魔法竜騎士へと投げ返した。さすがに驚いたのか、避ける間もなくその魔法竜騎士は地面へと火炎を纏いながら落下した。
僕は町へと視線を移す。最初に見えた町並みは無数のレンガの家が建ち並んでいたはずが、今ではすっかり破壊され尽くしている。
「何が……起きている!?」
「イージス。こっちだ」
アニーの声!
どこだどこだと探していると、アニーはひたすら町の中を走っていた。アニーは一人の少女を抱え、その彼女らを狙うように魔法竜騎士が空を飛んでアニーを襲う。
アニーを見つけるやいなや、アニーの竜はアニーのもとへと一目散に駆け抜ける。アニーは少女を抱えたままその竜に飛び乗り、その瞬間に上空へと飛んだ。
「イージス。私についてきて」
状況など一切呑み込めないまま、僕は空高く飛翔したアニーを追って竜を走らせる。雲を突き抜けた瞬間、アニーは一回転して両手を下方にかざした。
「イージス」
「了解」
僕も両手を下方へかざし、
「「〈
火炎の矢が僕らの両手から放たれ、雲を突き抜けてその先にいた魔法竜騎士にぶつかったらしい。うめき声が雲の向こうから聞こえ、僕たちはすかさず二番目の島へと向かう。
「ところでアニー、その少女は誰だ?」
「言ってなかったっけ?この子はヘルメス=クイーン。この子を巡って、魔法竜騎士が私を追っている。だから、ゴールするまで、彼らはずっと私らを追ってくる」
アニーが話している間にも、追ってきている魔法竜騎士たちは火の矢を飛ばして少女を捕らえようとやけになっている。だがアニーの竜は俊敏で危機察知には優れている。火の矢を紙一重で避け、反撃として火の矢を放つ。その攻防が無限に繰り返されている。
「イージス。このままではさすがに逃げきれない。だからこの際優勝は諦める」
「ああ。どうやらそうするしかないようだな……」
「二番目の島で身を潜める。そして海底を進んで三つ目の島に着き次第、空を飛んでゴールを目指す」
「了解」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます