魔法竜騎士編
第22話 竜
いつになったら私は外の景色を拝めるのだろうか?
いつになったら私は自由に生きることが許されるのだろうか?
いつだって、どんな時だって、私は一人のままなんだ。
たとえお伽噺の英雄でさえ、私を救ってはくれないのだ。
どうせいつか終わる世界ならば、今終わってしまえと、そう思うばかりである。
ーー孤独な彼女は月に唄う。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「イージス君。この問題の答えを述べなさい」
「はい。その問題の答えは重力の無効化、ではないでしょうか?」
「正解です」
「ではここの問題解ける人、いますか?」
授業は終わり、放課後がやってきた。
魔法学者の体験を終了した今、新しい職業へと足を進めていた。
「アニー。今度はどの職業を体験する?」
「それなんだけどさ……実は私、知り合いにかなり名門家の子の知り合いがいてさ、その子、救いたいんだよね。その子はずっと屋敷の中だけで暮らしてきたから何も知らないらしいんだ。だから魔法竜騎士になって、その子に外の景色を見せてあげたいんだ」
「うん。魔法竜騎士になろ」
「ありがとう」
「その子の名前は?」
「ヘルメス=クイーン」
こうして僕たちは、魔法竜騎士の体験に行くこととなった。
「えーっと、お前がイージスで、お前がアニーか。なるほどな……。で、魔法竜騎士についてはどれくらい知っている?」
魔法竜騎士の教員ーーエスト=クロニクル。
彼は背後で地に足をつけている体長十メートルは越えるであろう竜の頭を優しく撫でている
「僕は魔法竜騎士は竜に乗るだけっていうのしか知りません」
「私は魔法竜騎士については詳しく知っています。というか、全ての職業について詳しいです。竜に乗ったこともあります」
「そうか。一応オレはあまり時間を懸けたくないタイプでな、厳しく行くぞ」
エスト先生は竜に乗ると、親指で乗っている竜の背中を差した。
「乗れ」
僕たちは竜の背中へと乗った。
初めて乗る竜の感覚に興奮しつつも、落ちないように竜の背中にしっかりと掴まる、風を弾く魔法を使えれば楽だが、やはり魔法は苦手だ。
「じゃあ飛ぶぞ。飛翔、カリフー」
竜は翼を広げ、大海のように大きな空を駆ける。
「二人とも。一分間落ちることなく乗り続けられたら、君たちを魔法竜騎士として迎い入れよう。だがもし落ちるようなことがあれば、魔法竜騎士にはなれないから気をつけろよ」
そう言うと、エスト先生は突然速度を上げて、上空何度も回転したり、地面ギリギリになった瞬間に宙へ移動したり、更には上へ飛行する際に螺旋状に飛んだりと、落とす気満々だ。
「やりすぎだろ」
さすがに口からこぼれた、が、なぜかエスト先生は笑っている。
ふざけるなこの教師。どれだけ荒い飛行をすれば気が済むんだ。
おいおいおいおい、今度は大気圏突破したぞ。どこの劇団だよ。普通ここまでする奴なんかいないぞ。
と思っていた矢先、大気圏から地上へと一気に急降下した。
「ふざけるなぁぁぁああああ」
だが急降下している途中で一分が経ったのか、エスト先生はゆっくりと降下する。
「よくやった。お前たちには今から竜を授ける。なかなかに教育されている竜であるから故、初心者のお前らでも十分に乗りこなせる」
エスト先生が口笛を鳴らすと、二匹の竜が僕たちの前に現れた。
一匹は銀色の鱗に身を包み、体いっぱいに翼を大きく広げた竜。おそらく防御に特化している竜なのだろう。
もう一匹の竜は、紅に身を包み、翼を申し訳なさそうに包み込んだ竜、こちらの方は恐らく攻撃や俊敏さに特化した竜だろう。
「ではお前ら、どちらかを選べ。選んだ竜は、この先短い間ではあるが友になるのだからな」
僕はどちらを選ぶのか。
そんなこと、直感で決まっていた。
「僕は、この竜と空を飛びたい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます