第17話 魔法=心

「これより授業を始めます」


 カーマ先生がそう呼び掛けると、ここ魔法試験場第一号室にいた四十人の生徒は皆カーマ先生を見た。


「魔法とは常人では扱うことが難しい。いわば我々にしか使えぬ才能、それを扱う者こそが魔法使いである」

「ですが先生、やはり魔法の使い方が解らないのですが……」


 そう手を挙げて意義を唱えたのは、スカレア=アズハ。

 彼女の発言に、カーマ先生は冷静に答えた。


「魔法を使う?そんなに難しく考えるな。魔法とは心だ」

「先生。それはあくまで千年魔法聖典での教えではないのですか?」

「とは言っても、魔法自体が千年魔法聖典を書いた千年魔法教会が生み出したとささやかれる謎の。つまりは千年魔法教会の思考こそが魔法の使い方と考えることはできないか?」

「そうですが……やはり魔法は理解し難いものです」

「なら考えるな。そもそも物事とは、実践することが成長への近道だ。だからまずは挑戦だ。そこでつまずいたのなら、考えろ。それでも駄目なら努力しろ。魔法も勉強と変わらないんだよ」


 アズハは静かにため息を吐き、腕部分の服をまくった。


「解りましたよ。僕だって諦めが悪いですから、頑張りますよ」

「では始めよう。改めて言おう。魔法とは心そのものだ」


 そう言えばそんな授業を受けていたっけな。

 "魔法とは心"

 全く意味の解らない理論だが、正直その理論のおかげで魔法が少し使えるようになった。


 心を火炎に。

 心をそのまま形どれ。

 火炎よ、今姿を現したまえ。


「〈追火レア〉」


 火炎が僕の手から放たれた。

 謎の解放感とともに放たれた火炎は、スケルトンの頭部へ直撃し、スケルトンは灰のように散って消失した。


「サウス先生。これで、原始魔法零二の習得は完璧ですね」

「ああ。お前、やはりだな」

「何を言っているんですか?」

「何でもない。少し思い出しただけだ。魔法の理に抗った、一人の少年のことを」


 何を言っているのか、それを僕には理解することはできなかった。

 サウス先生は気を取り直し、次の魔法の特訓を開始する。


 必死に魔法と向き合うイージスを、水晶越しに覗く一人の男がいた。


「ゼウシア様。またを巡って戦いが起きてますよ。どうしますか……って話を聞いてください」


 ため息と憤怒が混ざったその口調に動じず、ゼウシアは延々と水晶を眺めている。

 ゼウシアに報告をしに来た魔法使いーーティアマティアをさすがに呆れを隠しきれず、ゼウシアの前で特大大きなため息をついた。


「全く、これだから自分勝手な人は嫌いなんですよ。ゼウシア様、そんなことよりも、今は目先のことに集中されたらどうですか?でなければ、あのを他の者に略奪されるかもしれませんよ」

「そうだな。解った。少しだけ力を出すとするか」


 ゼウシアは肩を回して立ち上がり、ティアマティアの横を通りすぎる。


「で、場所はどこだ?」

「永久閉鎖都市アン・クイーン」

「おもしろくなってきたか」


 ゼウシアは笑みを浮かべ、永久閉鎖都市アン・クイーンへと転移した。


「さあ、始まりだ」

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