第16話 原始魔法

 魔法学園に戻った僕たちは、今体験に来ている魔法学者という職業の先生ーーサウス=キャットハニー先生にダンジョンでの出来事を話した。


「なるほど。恐らくだが、彼らは最近出没している密売組織で間違いないだろう」

「あの花にはどんな価値があるのですか?」


 僕はふと聞いてみた。


「あの花の学名は《精霊の雫》という名でな、あの花は今起きている病気ーー結晶化という病気への特効薬として用いることが可能だ。他にも用途があるらしいが、私が君たちにその花を採らせに行ったのは、結晶化の治療薬を作りたかったからだ」

「ではもう一度ダンジョンに行きます」

「無駄だよ。あの花が一度採られれば、一日経たなければまた生えてくることはない」

「では、明日でなければ……」

「いや。明日もどうせ密売組織が花を狙ってダンジョンに来るだろう。だから君たちには今日と明日で基礎の魔法を徹底的に教える」


 サウス先生はそう言うと、白衣を着て部屋を後にする。


「ついてきなさい」


 僕とアニーはサウス先生の背中を追い、やって来た場所は魔法試験場第五号室の部屋。

 室内は白一面の部屋。


「では、基礎魔法となる原始魔法。零一から零六まで覚えてもらう」

「「はい」」


 原始魔法とは、世界で初めて魔法が創られた時、創られた書物に書かれていた魔法の数々。たしか魔法の数はそれぞれの属性全て零一から仇九まで存在するらしい。


「では火属性の零一の魔法。〈火焔クレナイ〉。この魔法は火を出現させるだけという初歩の魔法だ。授業で習ったと思う。やってみろ」


 まずはアニーが実践した。

 アニーは手のひらを上に向けると、少し手に力を込めた。すると、アニーの手のひらには火の玉が出現した。


。ではイージス。やってみろ」

「はい」


 僕は火属性の魔法はあまり得意ではない。というか、僕は無属性以外の魔法はあまり使えない。

 だが弱音は吐かず、授業で教わった通りに手のひらを上に向け、力を込める。数秒経ち、小さいながらも火が灯った。


「合格だ。では次は零二の魔法〈追火レア〉という魔法をやってみろ」


追火レア〉。

 それは火炎を放ち、対象に向け放つというこれまた基礎のような魔法。


「ではスケルトンを召喚する。私が召喚したスケルトンに火の玉を当てて見せよ」


 サウス先生が握れば包み込めるほどの小さな瓶を取り出すと、その瓶の蓋を空けた。そこから黒い霧が出たと思ったら、スケルトンが一匹僕らの前に出現した。

 人間が白骨化したような見た目を有している。


「アニー。まずは君からだ」

「はい」


 アニーは数十歩手前にいるスケルトンに手をかざすと、手には火炎が灯る。


「〈追火レア〉」


 そう唱えると、アニーの手から火炎の玉が放たれた。

 放たれた火炎は見事スケルトンの頭部へと直撃する。


「ではイージス」

「はい」


 僕はスケルトンへ手をかざした。が、スケルトンはアニーの火炎をくらったせいか、怒っているようにも見える。

 スケルトンは駆け、僕の頭部へ殴りかかる。


 魔法はやっぱ、苦手だな。


 スケルトンの拳が頭部へ当たる寸前、僕は魔法を学んでいた授業のことを思い出していた。

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