第13話 未来への剣
黒兜スケルトンの剣が漆黒の闇を纏いながら僕の首を斬り落とすように振りかざされる。
「はっ」
咄嗟に剣で漆黒の剣を受け止めるも、威力が激しく、地面を削りながら僕は後方へと下がった。それを隙と捉えたか、黒兜スケルトンの剣が連撃で放たれる。
僕は後方へと飛んで、木を足場として黒兜スケルトンの頭上へと飛ぶ。
「はあぁぁああ」
僕は剣を大きく振るい上げ、黒兜スケルトンの頭部へと剣で一撃をいれた。が、黒兜スケルトンはそれを剣で受け止めた。
「さすがに速すぎる……」
黒兜スケルトンは僕の剣を弾き、吹き飛んだ僕の左肩に剣を突き刺した。血が吹き出て、僕は地面に転がった。
黒兜スケルトンは剣を高く振るい、僕の心臓部へと突き刺す。がそれをかわして黒兜スケルトンの懐へと入った。
もう負けられないんだよ。
もう失いたくないんだよ。
全てを護り、全てを救える、そんな魔法使いになりたいんだよ。
だから、
「はあぁぁぁぁあああ」
剣を振り上げ、黒兜スケルトンの体を粉々に斬り砕いた。
勝利した、が、たった一度の戦いでこれだけ疲れれば、きっとこれから来るスケルトンとはまともに戦えないだろう。
僕が疲弊しきっていると、重たい体を足早に進め、青く輝く巨大な斧を地面に擦り付けながらこちらへと走っている。
「イージス。次の敵が来たぞ」
振り向くと、着地した瞬間に地面を破壊し尽くさん勢いで斧を振るい、削り粉砕された地面によって僕は宙に体を浮かせた。吹き飛んだ僕の体を目掛け、巨大な斧を腹に直撃させた。
「がっ…………」
骨が折れるような音とともに、僕は背面にあった木へと衝突した。痛みが全身を駆け抜け、頭からは血が出ている。指先など痺れて動かせず、ただ倒れたまま何もできずに横たわる。
だが襲いかかってきた相手は休む間を与えてはくれない。
「イージス。そいつはスケルトンウォーリアだ。そのスケルトンの攻撃を二度もくらえば、普通の人間は死ぬ、というか全身の骨が砕けて終わりだ……」
つまりは、今僕は死ぬということだ。
体を起き上がらせることもできず、そして弟たちに裕福な生活も送らせられないまま死なせてしまう。
そんなの、僕が一番許せない。
「サンダー先輩。手助けは無用です」
僕は折れたはずであろう全身の骨など気にせず、剣を握って無理矢理立ち上がった。
死ぬであろうこの命、でも、弟や妹、母さんのために、戦うよ。
疾風の中を獅子の如く駆け抜け、深海のさらに奥底にいるかのような暗さと体の重さに限界を感じつつも、やわな腕で剣を握り、スケルトンウォーリアへと立ち向かう。
鋼の体を持っていれば楽だろうに。
死などなければ幸せだったろうに。
お金さえあれば、もっと多くのことを学べただろうに。
だけど、これまで歩んできた人生があったからこそ、今の僕は完成された。
今さら、自分を否定などしないさ。
たとえそれが正解じゃなくても、たとえ人生そのものが悪であったとしても、この剣は、折れないよ。
「駆け抜けろ」
雷鳴が駆け抜けるかの如く、僕は森の中を走る。
木を足場として駆け抜けて、時折空を切る感覚に体が痺れる。だが剣だけは離さず、ただ一点のみを目掛けて剣を構える。
高速移動しながら地に足をつけ、再び木に足をつけ、木と木の間を行き来し、そしてスケルトンウォーリアの背後をとった瞬間、僕は剣を強く握りしめた。
たった一度の攻撃になるだろう。
だからこそ、この一撃に全てを込めると、僕は誓った。
「
純白の光に包まれた白刃の剣。
時空が歪んだと錯覚させるほどの震撼に、空は揺らいで木が悲鳴をあげる。絶望から一閃での解放、そのたった一撃が全てを焼き払い、光が太陽の如く降り注いだ。
跳ねられたのは、骨の首。
それは、スケルトンウォーリアのもので間違いなかった。
「勝ったよ。僕、勝った……よ……」
僕は力尽き、倒れた。
ーーまた、倒れちゃったね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます