第12話 特訓
イージスはアニーから剣を投げ渡され、それを両手で抱えるようにしてキャッチした。
イージスの登場に、黒いローブに身を覆った少年は驚きを隠せない。
「彼がいるのか……。ならばここは退くか。〈
少年がそう発すると、大気中に空いた穴は消え、その穴が消えると同時にその穴から現れたモンスターは硝子片のように変化し、消滅した。
「今日のところはさようならだ。また会おうね。イージス」
黒いローブの少年が指を鳴らすと、闇が彼を覆った。
蛇のように絡み付く闇は少しずつ体積を増していき、やがて彼の全身を覆った。そして闇が消えるとともに、彼は姿を消した。
「逃げられたか……」
アリシア先生は剣を鞘にしまい、僕へと歩み寄ってきた。
「イージス。このコンテストは中止になった。お前の事情は重々解ってはいるが、今は学園に向かって状況の報告をする」
アリシア先生は申し訳なさそうにそう言った。
とは言っても、悪いのはアリシア先生ではないじゃないですか。なのにどうしてそんなに哀しい顔をするんですか?確かに家計は辛いですけど、大丈夫ですよ。
「アリシア先生。速く学園に向かいましょう」
僕は笑顔でアリシア先生にそう答え、サンダー先輩やアニー、あとは転移の魔法を使えるサクヤ先輩とともに学園へ向かう。
「では転移するぞ」
地面に刻まれた円の中にいる僕たちは、一瞬にして魔法学園の屋上に転移した。
「今すぐ理事長室に……」
とサクヤ先輩は言い欠けた。だが彼女の口は動くことをやめ、自ずと死線を上空へと向けていた。
何を見ているのかと気になって空を見てみると、巨大な竜に乗った生徒たちが、剣を携えてダンジョンがある方角へと飛んでいた。
「アリシア先生……。世界は、どうなっているんでしょうか……?」
「多分このままでは、大変なことになりかねない。報告は私一人で行く。だからサンダー、サクヤ、二人はアニーとイージスを鍛えてやってくれ」
「「はい」」
焦りと緊張が混じる中、サンダー先輩とサクヤ先輩は僕とアニーを連れてどこかの森の中に転移した。
剥き出しになっている不気味な空気に怯えつつも、僕はサンダー先輩へ問う。
「ここは、どこですか?」
「ここはスケルトン大森林と言ってな、骸骨系のモンスターが生息している森だ。ここのスケルトンは多様性に優れており、速く剣の上達を試みるには最適の場所だ」
とサンダー先輩が話している間にも、剣を持って兜を被った人間大のスケルトンが僕らの方へと歩いてくる。
「イージス。お前がやってみろ」
僕は剣を抜き、それを前方で構える。
兜スケルトンが僕の間合いに入った瞬間、剣が高速で振り上げられた。油断していたせいか、僕は体勢を後ろへと崩した。その隙を見逃さず、スケルトンは剣で突きをしてくる。
「〈
スケルトンの剣を防ぐように盾が形成され、スケルトンの剣が盾によって弾かれた瞬間を見計らい、僕はスケルトンへと飛び込み、横一閃に剣を振るった。
スケルトンは粉々に砕け、剣と兜が地に落ち、そして消失した。
「イージス。油断はするな。たとえ相手がスケルトンだからと言って、油断は命取りとなる。もっと気を引き締めろ」
「はい」
「サクヤ、アニーはお前に任せた。俺はイージスの指導をする」
「判った。アニー、こっちへ来て」
サクヤ先輩に連れられ、アニーは少し遠くに移動した。
僕はただ剣を構え、再び現れたスケルトンへ剣を構えた、のだが、僕の前に現れたスケルトンの容姿は、黒い兜に左手には黒い剣、右手には黒い盾を持ち、僕へと一直線に駆け抜けてくる。
「速い!」
黒兜スケルトンが僕の手前まで来ると、ジャンプして剣を後ろへと振りかぶる。
「〈絶剣〉」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます