第11話 幻影の光

 三人目の参加者。

 彼は謎の威圧感を漂わせ、ざわついていた会場は緊張感とともに静寂に包まれた。


 ーー鈍く光る幻影の光、それこそ、私が求める希望であった。


「私はエイリアン=ライター。これより私が見せるのは、あらゆる世界にひびをいれ、割れた場所から無数にモンスターを出現させるという魔法です。では、ご覧あれ」


 少年はローブで全身を覆っており、顔や体格ははっきりしていない。だが一つ言えることは、子供であること。

 身長は低く、声変わりなどまだしてないであろう声質。


「アリシア先生。もしあの少年が言っていることが本当ならば、まずいことが起きるのではないでしょうか?」


「落ち着けサンダー。きっとあの少年もそれを理解……」


 アリシアは固まった。

 なぜならば、少年はローブ越しでも解る悪魔のような笑みを浮かべていたのだから。


「サンダー、剣を抜け。ここは、戦場に変わる」


 アリシアはそう言い、剣を抜いた。が、遅かった。

 多くの異形なる生き物ーーモンスターが会場に出現したのだ。大気に空いた穴から、無数にモンスターが現れる。その光景に、会場はざわつく。


「この程度で驚いてしまうとは、やはり世界一の魔法学園附属の商店街であろうと、脆いな。さあ襲え。全ての人々を喰らい尽くせ」


 モンスターはまだ会場には届かない。

 だが少年が会場の方を指差すと、モンスターは一斉に会場へと走る。だがそんなモンスターたちの前に、アリシアは剣を抜いて立ちふさがる。


「エイリアン=ライター。魔法規則違反により、お前を捕縛する」


「やってみなよ。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 魔法学園では、いつものように授業が行われていた。

 だが校長が不在ということもあってか、魔法学園はいつも以上に警戒心が強かった。だからだろうか、魔法学園の教師ーーエスト=クロニクルは不審な気配を感じていた。


「空が少し濁っている。まるで何かが起きることを暗示しているかのように……」


 いつも通りの晴天の空はなく、真水の中に墨汁を一滴垂らしたような、そんな濁り色をしていた。

 そんな空を怪しげに見つめ、エストは相棒の竜ーーローマンに乗って商店街へと向かう。


「ローマン。少しスピードを上げてくれ」


 エストの乗る竜はものすごいスピードで空を駆け、魔法学園からあまり遠くはない商店街の上空についた。

 濁った空とは裏腹に、商店街はいつも以上の賑わいで盛り上がっていた。


「祭りが行われているからといって、少し警戒し過ぎていたな。ローマン、帰るぞ」


 エストは引き返し、魔法学園へと歩みを戻した。

 だがしかし、商店街の見えないところで、何本もの刃は学園へと牙を向けていることに、まだ誰も気づきはしない。


「先生。もうじき魔法学園は堕ちますね」


「ああ。忌まわしき魔法学園よ。いつかその城を、天上から落としてやる」



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「おいおい。どうしてこんなところに戦龍がいるんだよ!?」


 鎧のような鱗を有し、両手で刀を握る人間では到底勝てないであろう体格と力を有する人間を真似たかのような二足歩行をする一匹の龍ーー戦龍。


「生徒たち。すぐにダンジョンを抜ける。速く……」


 一人の教師は慌てた口調でそう言った。だがしかし、ここ一本道で、彼らは前も後ろも囲まれて、さらには戦龍がいるという状況ーーこれぞ絶体絶命というやつなのだろう。

 危機に陥った生徒たち。彼らを統率する教師は魔法で学園にテレパシーを行い、今は生き延びることに専念する。


 多くの危機が一度に迎え来る中で、イージスは控え室で茶を飲んでいた。


「はぁ。このコンテスト、優勝しなければ……」


 コンテストがなくなったとはつゆ知らず、彼は体内にあるであろう魔力を体内中駆け巡らせていた。

 そんな中、激しい轟音が控え室へと届いた。


「何だ!この音」


 イージスは轟音が鳴ったであろう会場へと足を走らせる。

 会場への扉を開け舞台に出てみると、そこでは何百ものモンスターがアリシアに襲いかかっていた。


「アリシア先生!?」


「イージス。ここでモンスターを食い止めなければ、ここの商店街は、

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