第10話 カーマ=インドラ
カーマ=インドラ。
彼女はイージスやアニーのクラスの担任であり、そして魔法僧侶でもある女性だ。
「私が見せるのは、誰も見たことのない回復魔法です」
彼女の言ったことに、大多数の者が理解できずにいる。
その観客の中にいたアリシア、サンダー、サクヤ、アニー。彼女らは必死に思考を巡らせるも、やはり彼女が何を言っているのか解らない。
「なあアニー。お前の担任はいつもあんな感じでわけの解らないことを呟くのか?」
ふとサンダーは、アニーへと呟く。
「違うよ。いつもカーマ先生はまともなことしか言ってないよ。あ、でもたまにおかしいことを言うけど、それはしっかりと理屈が通っているから、もしかしたら今回もそれと同じで、陸上通っているんじゃないかな」
「そもそもだな、誰も見たことのない回復魔法って言っているが、回復魔法は対象者がいなければ見せられないだろ。でも彼女はやろうとしている。さすがにおかしくないか?」
「だがなサンダー、もし彼女が言っていることが私たちの思うことの数百倍幻想的なものなのだとしたら、彼女は歴史を変えてしまうほどの何かをするつもりだろう」
カーマ=インドラは両手を天に掲げた。
会場は一体何をするのやらと溢れんばかりの疑問で溢れている。そんな中で、彼女はささやかなる笑みをこぼした。
「ではこれより、私の回復魔法を見せよう。〈
カーマの手の十本の指先からは、淡い黄色く細い糸が生えているようにして風に揺られている。
「この魔法は魔法と技術の二つが必要になり魔法です。ケガを治す時、普通なら魔法で遠隔的に治すのが主流です。だが私の魔法は少し違う。たとえ魔力が少量の人でも、医療に関する知識があるのなら、この光の糸で縫うだけで傷や腕が切断されたとしても治せます」
観客席にいたアリシアたちは、感心するばかりだ。
「さすがだな。やはりカーマは人とは発想が違うな」
「そうですね。魔法が主流と言われているこの世界で、その常識を壊すようにして少し地味ではあるが、医療界を発展させる魔法になるだろう」
そんなことを言われているとも知らず、カーマは指先からは生えた光の糸を消した。
「これにて私のショーは終わりです」
そう言ってカーマはその場を後にする。
彼女とすれ違い様に通った少年。彼は左肩に十字架の紋章を刻み、緋色の目を宿して歩いている。
三人目の参加者が姿を現しているその最中、ダンジョンでは、五人の少年が叫び、そして怯えながら走って逃げている。
「まずいです……。このままでは、あの謎のモンスターに殺されます……」
逃げ惑う一人の少年の足場に刀が振り下ろされ、少年は宙へと大きく吹き飛んだ。だが彼が吹き飛んだのを見て見ぬふりをし、足早にダンジョンを抜け出そうと駆け抜ける
「待ってくれ……。俺は……こんなところで、死にたくない」
転んだ一人の少年へ、紅刃の刀が容赦なく振り下ろされた。
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