第4話 魔法剣士の道
「では、始めだ」
その合図とともに、僕とアニーは剣をアリシア先生へと振るう。だが、
背後に気配を感じ、身を翻すと、アリシア先生が剣を肩に持ち背後に立っていた。
「遅い遅い」
アニーは右足を軸に一回転し、剣を横一閃に振り回す。だがアリシア先生は飛び、剣は僕の胸を直撃する。
「イージス。大丈夫!?」
剣は直撃したはず。だが痛みはなく、クッションのような柔らかいものが胸に当たった感覚があった。
「どうやら人に当たると本当に柔らかくなるらしい」
それが解ったことで、僕のためらいは吹っ切れた。
剣を後方へと構え、その剣を着地したばかりのアリシア先生へと振るう。
「着地した瞬間に攻撃するというのはなかなか素晴らしいな。だがな、まだまだだ」
僕の振るった剣は、アリシア先生の握る剣によって弾かれた。
アニーは再びアリシア先生へと剣を振るうも、アリシア先生は剣筋を見きっているのか、軽々と避けてアニーの懐へと潜った。
「おいおい。隙だらけだ」
アリシア先生は剣で優しくアニーの腹をつついた。
「では、勝負は終了だ」
アリシア先生は剣を地面に投げ捨てると、硝子のように砕けて一片も残さず消滅した。
僕たちも真似、剣を地面に投げ捨てると剣は消滅した。
「イージス。そしてアニー。しばらくの間、私とサンダーという私と同等の強さを有す者が、君たちに魔法剣士の修行をしよう」
そう言うと、一人の少年がこちらへと歩いてきた。
「先生。勝手な真似はしないでくださいよ。せめて許可くらいとってください」
ひどく呆れた口調でそう言った。
アリシア先生は笑って誤魔化し、少年が隣で止まったのを確認し、彼の自己紹介を始める。
「彼はサンダー=ライデン。この学園に在籍している生徒の中では、最も強い魔法剣士であると言っても過言ではない。それに魔法成績は学園で一位二位を争うほどの天才だ。だから彼はきっと教えるのも上手い。解らないことがあったら何でも聞けよ。サンダーに」
「謙遜はしませんよ。それらは全て事実ですから。ですが今年は春の全国大会があるんですよ。そんな暇はないんですけど……」
「まあだがな、教えて思い出すこともあるだろうし、この子達をよろしくな」
アリシア先生はサンダー先輩の肩を叩いた。
サンダー先輩はため息を吐くも、頭を抱えながら、
「解りましたよ。その代わり、いつか寿司でも奢ってください」
「そのくらいの常識は心得ているから安心しなさい」
「そうですか。では彼らの教育は俺に一任してください」
「任せたぞ」
「解りました」
サンダー先輩とアリシア先生は仲むつまじげに話し、サンダーは僕たちの方へと振り向いた。
「イージスとアニーだね。俺が教えるからには、十日以内で格段のスキルアップをすることを約束しよう」
サンダー先輩は自信満々でそう言い放った。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
永遠に続く常闇の中を、僕とアニーがサンダー先輩の背中を追いかける。サンダー先輩の正面に浮かぶ火の玉を頼りに、僕たちは腰に剣を携えて歩く。
時折聞こえるモンスターのうねり声に肩を驚かせるも、サンダー先輩を見失わないように足を進める。だがしかし、サンダー先輩は無言で足を止めた。
「どうしたのですか?」
「ようやくついたぞ。《戦龍の眠り家》に」
僕たちは今いるのは、ダンジョンと呼ばれるモンスターが永遠と生み出される恐怖の巣窟。そこに入れば、二度と戻ってこれないと新入生の間では必ず噂になる。
そんな闇が集いし巣窟、その巣窟の隠しエリアにひっそりと造られた一匹の龍のための寝床ーー《戦龍の眠り家》
その入り口の前に、僕らはいる。
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