第9話 タデウス

ホロビューにテキストが表示される…夢を映像化。

(カリフォルニア大学バークリー校 タデウス・シュロック教授)


「皆さんは、睡眠時に見た夢を、映像化出来る機械がある事はご存知だろうと思います。100年以上昔にプロトタイプが出来て、つい30年ほど前にようやく真っ当なモノが完成して、当時は非常に話題になったものでして、私はその開発に携わっておった者です」


「まぁ、今回は夢の話ではなく、これの次の段階で、更にこの研究を進めたところ、人類が持っている遺伝子の中の記憶までも映像化出来る事になったという訳です」


「この、人類の持つ記憶を映像化した所、予想通り一部の記憶は大変、凄惨を極めたものも含まれており余程の癖が無い限り一般の人間が見るとPTSDになる事は目に見えておりますので…」


「そこで、AIを使用して、餞別、分類、をして、まぁ現在も進行中ですが…で、その中に白人種が黒人種に打ち負かされていた時代の映像が大量に抽出されました、ようは白人が黒人を恐れる理由になったであろうと思われる映像ですね」


「実は、一部の皆さんの頭の中にも、この映像は遺伝情報として残っているのです。よく、娯楽系メディアでやっている、幽霊や超自然現象のコンテンツで、人が死ぬ前に、黒い人影を見たとか、沢山の黒い人影がベットの周りを歩いてる、と言っていた直後に亡くなったとか、あの、黒い影が、死神だったんじゃないか?とかいう話を、聞いた事があると思います。

この、大昔から報告のある事例ですが、この黒い影の正体こそ、黒人種であり、黒人に迫害された時の白人種のトラウマの遺伝記憶ではないかという事なんです」


「黒人種と対峙した時、他の人種にとって、黒い人イコール死を意味する事だった時代が長く続いていた証拠として注目しています」


「ごく最近、近世までアルビノ狩りといって、アルビノ種を虐殺する事件が黒人種の間で続いておりましたが、これも野生で長い間白人種と接していた時の、黒人種側の記憶の影響なのです。白人種と争い、ほとんどの場合、狩りをするように、一種の娯楽として殺めていた時の

遺伝子の記憶です。これは、現代の黒人種の記憶のDNAにも残っているのです」


「私は、日本の侍の歴史も好きなのですが…そう、地球の日本です。セクサロイドの大半を作っている…侍は、あの日本の昔の職業軍人の集団です。で、その中のある話で、病気で、死が近づいている侍が、黒い人が部屋に沢山入ってきたと、刀を振り回す話が残っているんですね」


「もちろん、彼以外の人には黒い人なんか見えていない訳なんです。その侍は幻覚相手に刀を振りまわし、絶命するんですね。東洋人の遺伝子にも、黒い人が、まさに死のイメージであるという、遺伝の記憶が残っている歴史的な証拠じゃないかと、個人的に注目しています」


「…そろそろ時間ですね。すみません」


「一つ誤解しないでほしいのは、現在において、黒人に生まれた事が、罪というわけでは無いという事です。これは、100年も200年も昔の戦争犯罪をいつまでも、その犯罪者の出身国の国民に対して謝罪や弁償を求め続ける事と同じことで、世界が文明化した後の黒人には、何の罪もないという事です」


「むしろ、世界が文明化した後の黒人は、常に被害者であり続けたのです。…私の話はここまでで、ぁー。少し話過ぎましたね」


「教授、生徒の皆さん、ご清聴ありがとうございました」

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