第4話 クリスチナ
「ハイラス。助かったわ!ありがとう」クリスチナのアバター表示と共に、ユニミュに通信が入る。「フゥ、まぐれだよ」ハイラス自身、発見した事に驚いている。「一応、通り過ぎる際に確認したんだけど…あいつら、手を振っていたのよ!」クリスチナが声を荒げる。
「ハハハ」クリスチナの怒っている様子が目に浮かび、ハイラスはつい笑ってしまった。「笑い事じゃないわ。あんなの卑怯よ!」
「紛争地域なんかでは、物売り風の子供が、服の下に爆弾を巻き付けて笑顔で近付いて来る…」クリスチナを宥めようとするハイラス。
「そう考えると、演習でもルール無用って事か。戦死判定者は、手を振っちゃいけない…!なんて演習ガイドラインには書かれていないもんな」チャールズも会話に加わる。
「一応、他の部隊にもゾンビの情報を共有しておいた方が良いわね」とクリスチナ。
続けてチャールズ「あいつら、手を振ってるぞ!って付け加えないとな」
「チャールズ、あんた今日は調子悪いんじゃないの?」矛先がゾンビからチャールズに向く。「逆にオレが調子良かった日ってあるか?」「…それもそうね」
確かに、今日はのチャールズは何か上の空だとハイラスも感じていた。クリスチナとチャールズのヤリトリが面倒なので、ハイラスは違う話に持っていく。「…そういえば月や火星の部隊には、凄腕のセクサロイド兵が混じっているって聞いたことがあるけど」
チャールズが、待っていましたとばかりに素早く反応する。「教導団の先生方に何体かいるみたいだな」
クリスチナも話に加わる「前の星間戦争時のエースパイロットが、AJに搭乗してるんじゃないかって話ね。でも、セクサロイドの兵士を稼働させてる事自体、星間国際法に引っかかるんじゃないの?」
ハイラスが答える「演習は戦争じゃない…訓練に限って、セクサロイドを使っても、違法ではない…っていう姿勢なんだと思う」
「どうりで、月の部隊とシュミレーターでやりあった時、理解不可能な動きをするのがあったな…」チャールズが話し終わると同時に、ユニコミュから通信が入る「フォスター隊、エンゲージ!」先行しているジェイク・フォスター中尉だ。戦術ディスプレイのマップ上、制圧ポイントの手前で明滅している。
「了解!アーヴィング隊、援護に向かう」ハイラス機を先頭に、周囲を警戒しながら進軍する。
…クリスチナ達が援護に加わる前に、フォスター隊が制圧ポイント手前のアドバーサリーを全滅させた後だった。ちょうど、6輪空挺装甲車が歩兵を伴って、制圧ポイントの基地に入っていく。
「よぉ。ハロウィーンでもないのにゾンビと遊んでいたんだって?」
ジェイク・フォスター中尉がユニコミュでクリスチナ達に話しかける。「ジェイ、レディーファーストって言葉知らないの?」クリスチナが不満そうに言う。
「だから、最初のヤツらはお譲りしたじゃないか」「ジェイク。だから、あんたセクサロイドにしか相手されないのよ」「オッホホ!言うねぇ。チャーリー、お前たちも苦労するな」ジェイクがチャールズにふる。「ぁ。解ってもらえます?」「どう言う意味よ。だいたい…」クリスチナの言葉を遮るように、電子音と共にモニター上に[演習終了]の文字が表示される。
「おっと、作戦終了だ。皆、よくやった!…個々のご意見はブリーフィングで。それでは、後でな」ジェイク・フォスターが早々に話を切り上げる。
沈黙に耐えられなくなったか、ピーコミュからチャールズが話しだす。
「まぁ、歩兵にやられました。なんて事にならなかったんだから、良いんじゃないか…?」
「ハハ。チャーリー。お前が言うのか?」ハイラスもすかさず会話に入る。
「フフン」チャールズが鼻で笑う。
「チャーリーの言う通り、戦死者判定も出さず、制圧ポイントへ友軍を向かわせたんだ。何の問題もないさ、だろ?クリスチナ」ハイラスがクリスチナに同意を求める。
「…そうね。ありがと、2人共。じゃ、戻ろっか」クリスチナが、ピーコミュで言うやいなや
「各機、指定ポイントまで撤収して下さい。自走出来ない機体は、回収班が来るまで待機して下さい」第一世代のセクサロイド特有の機械的な音声がイヤフォンから流れてくる…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます