第3話 ジェレミー

「っ!」ジェレミー・グリーア曹長の左手首に装着している、演習用タクティカルバンドから、なかなかの電流が走る。「チッ、戦死だ…」


誰だ、このしょうもないシステムを考えた奴は!…デッカイお人形さんに撃たれてしまった。被弾、破損、戦死等の判定を受けると、このバンドから電気が…ビリビリが走る。実験用マウスの気分だ。コイツのせいで、プライベートでは腕時計なるものを着けなくなってしまった。


「悔しいっすね!曹長殿」マーティン・ゲインズ上等兵が被弾判定を受け、動かなくなった装甲車輛のドライバーズシートから興奮した様子でジェレミー・グリーア曹長を見上げながら言う。綺麗な顔をしてるのでもっとクールな奴かと思っていたが、意外に感情的になるのだなと、

ジェレミー・グリーアは部下の新しい一面を発見し、口を開く「車輛とオレは被弾、戦死判定を受けているが、上等兵、君はまだ無傷だぞ」


マーティン・ゲインズ上等兵が、少し間をおいてニヤリとした後「この、AJ用バズーカも演習用ですね?」と、車載装備、対AJ用ロケットランチャーに手を伸ばす。


クリスチナ機が、撃破した車輛の脇を通り過ぎる際、死亡判定を受けたと思われる装甲車のクルーは、気だるそうにクリスチナ機のほうへ手を振っていた。


中には早速、紫煙をくゆらすクルーまで確認できる。クリスチナは呆れつつ、彼らが演習終了まで日光浴か、演習レポートを一足先仕上げてしまうのを羨ましく思う。


先程から落着かない。降下直後に戦闘になったからでも、生理現象でもなく。ヘッドセットの不具合か?耳鳴りを感じる。ハイラスはふと、眼球を動かし、AJの後方カメラビューをヴァイザーに大写しになるよう操作した。ヴァイザー越しに、先程、撃破判定を与えた装甲車両から搭乗員が周囲を伺いながら這い出してきた。…次にハッチから筒状のものを引っ張り上げる…。


ハイラスが即座にチャフ、フレア弾を射出し、「8時方向!ゾンビだ!散開しろ!」インカムに、聞き取りやすいよう注意しながら話す。

直後に動かない装甲車両付近から模擬弾の鮮やかなスモークの弾道が伸びる。警戒アラーム。AJのタクティカルディスプレイに情報が表示される。「無効」の表示。チャフ等の効果だろう。続けて、2本の模擬弾の弾道が伸びる…。

「!!っ各機、AIコマンド射撃!」クリスチナが指示を出す。複数の脅威がある場合、AJ同士のネットワークシステムを介して、各機体の場所や状態をAIが判断し、どの目標にどの様な行動をとるか、コマンドやサポートが入るようになっている。

鮮やかなスモークの弾道は、目標の横を逸れていく。「まだ、マジメに演習をやろうとしてる奴らが居るなんて、驚いたね」とチャールズ。

クリスチナ機とハイラス機が、AIのコマンド通りの標的に発砲し、ゾンビにとどめを刺す。


マーティン・ゲインズ伍長のタクティカルバンドから電気が流れる。「わっ!…ぁあ、戦死しちゃいましたよ。すみません、曹長殿」「気にするな、ゲインズ上等兵。頑張った方さ」「でも、スゴイですね。後ろにも眼があるみたいですよ」「そりゃ、アイツが今のところ主力兵器なんだ。ぷらっと、バズーカを抱えた兵士に撃破されたんじゃ、こっちが不安になる」ジェレミー・グリーアは、現代のゴリアテに成りそびれた青年に慰めの言葉をかける。


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