第54話 久しぶりのウォルテミスダンジョン

 インプ狩りを中心とした生活を1か月ほど続けた頃、アル達は四人ともレベル12に上がっていた。

 とくに戦士のアルは装備を一通り揃え、レベルアップ以上に強くなっていた。


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 名前 アル

 年齢 16歳

 レベル 12

 種族 人間

 職業 戦士

 HP  146/146

 MP  85/85

 攻撃力 68

 防御力 80

 武器 ショートソード+1

 防具 鎖かたびら

    ウッドラウンドシールド

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「へっへ。全部変えてやったぜ。一気に強くなった感じがするな!」

 アルは前日に揃えた武器や防具を装備して冒険者ギルドへ来ると、上機嫌で言った。


「戦士って不便だな。装備に金が掛かりすぎるんだよ。まじシーフで良かったぜ」

 エリーは、はしゃいでいるアルの様子を見ながら、小馬鹿にするように言った。


「なんだよエリー。もしかして羨ましいか?」

「はん」

 エリーはアルの言葉に言い返す気も起きない。


 アル達四人は、朝から冒険者ギルドに集まった。

 インプ狩りのおかげで収入が安定し、最近は余裕のある生活を送れるようになったのだが、そろそろ違うクエストをやりたくなっていた。


「昨日みんなで決めたとおり、今日は久しぶりにダンジョンだね。ジャンさんの話では、だいぶ空いてきてるみたいだから、地下四階五階のホブゴブリンの魔鉱石五個のクエストね」

 レネオが今日の予定を説明した。


「久しぶりの暗いダンジョンは、ちょっと緊張しますが、強くなった皆さんを見るのが楽しみです」

 シンシアは三人を優しく見守るように言った。


「おうよ! 俺の強くなったとこ見せてやるぜ!」

 アルが楽しそうにガッツポーズしてみせる。


「ばかアルが、おだてられやがって」

 エリーが鼻で笑った。


「なんだとエリー! 強くなった戦士様にビビるんじゃねえぞ!」

「はいはい。今日はアル様の強さを楽しみにしてるよ」

 ずっとテンションの高いアルを、流すようにエリーは相手した。


「アルもエリーも朝から元気ですね!」

 シンシアは二人を見ながら爽やかに笑った。


「いやいや、元気なのはアルだけだろ……」

 エリーは不服そうに漏らした。


「それじゃそろそろ行こっか。地下四階が混んでたら、五階まで降りないといけないから、時間かかりそうだしね」

 レネオがみんなに声を掛け、出発することになった。



 久しぶりのウォルテミスダンジョンだったが、前とは違う感覚だと四人は気付いた。

 地下二階までのゴブリンはもちろん、地下三階のオークもほとんど苦戦しなくなっていた。


 全員レベルが上がっていて、パーティ全体が底上げされているのもあったが、アルの防御力が高くなったのがとくに大きかった。

 シンシアがガードの魔法を使いでもすると、ほとんどダメージを受けなくなるので、一人で敵全部を引きつけられるようになった。


「やっぱり戦士は、装備を変えるとかなり変わるよね。アルが随分頼もしく見えるよ」

「だよな! さすがレネオ、よく分かってるじゃん! エリーもビビっただろ?」


「まあ、これでやっとまともな戦士になったって感じだな」

「エリー、もうちょっと素直に褒めてもいいんじゃないですか?」

「ふん」

 エリーがそっぽを向くと、シンシアはクスクスと笑った。


 初めてダンジョンに来てから半年ほど経っていた。

 アル達のパーティが、安定して強くなったのは間違いなかった。


 アル以外のメンバーは防御力が低いため、戦士のアルがどこまで敵を引きつけられるかが大きなカギになる。

 両手剣持ちではなく、盾持ち片手剣の戦士アルが、パーティのバランスをうまく作っていた。



 地下四階に降りると、想像と違って他のパーティは見当たらなかった。

 冒険者学園の卒業生たちは、すでに次のステップへ進んでいるパーティが多く、ウォルテミスダンジョンの地下四階五階は、数カ月前の静けさを取り戻していた。


「ジャンさんの言う通り、というか、それ以上に空いてるみたいだね」

 レネオが辺りを見回しながら言った。


「ああ、これなら魔鉱石集めがはかどりそうだぜ! 前回は五個集めるのに二日だったけど、一日でいけるんじゃね?」

 アルは大口をたたくように言ったが、他の三人もアルの意見に同意していた。


 ホブゴブリン戦も思った通り容易に勝つことができた。


 アルがホブゴブリン二匹を一人で引きつけても耐えられ、その間にエリーが他を一掃する。

 レネオとシンシアの魔法は、一戦につき一回も使えば十分だった。


 ダンジョンが空いているうえ、一回の戦闘時間も短くなっているので、高い効率でホブゴブリン狩りを進めることができ、アル達は本当に一日で魔鉱石を五個集めた。


「よし、もう完了だぜ」

 アルが五個目の魔鉱石を拾いながら言った。


「まだ外は明るいんじゃね? ウォルテミスダンジョンは近くて、すぐに戻れるからいいよな」

「うん、毎回宿に戻れるのがいいですよね!」

 エリーとシンシアがインプ狩りと比べて言った。


「そうだね。だから遠いインプの狩場は知られてないのかも。僕らも空いてるならこっちの方がいいしね。――――ん?」

 レネオが、喋りながら他のパーティが近づいてきていることに気がついた。


「やあ君たち。あまり見ない顔だね」

 彼らはそのまま通り過ぎず、立ち止まってアル達に話し掛けてきた。


「このダンジョンに来るのは一カ月ぶりぐらいだからな。ホブゴブリンの魔鉱石集めを久しぶりにやったとこだ」

 アルがそう言うと、彼らは何かを確認するようにお互いを目で合図し、先頭を歩いてきた戦士が続けて言ってきた。


「じゃあ、一緒にボス戦でもやらないかい?」

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