第47話 掃討作戦の前日
タオスの森の集合場所には、かなりの数の冒険者が集まっていた。
「すげえ数だな!」
「うん、100人ぐらいいるかも。これほどの規模のクエストとはね……」
アルとレネオは想像以上の数に圧倒されていた。
「あたしらウォルテミスに来て1年近くになるけど、見たことない顔がこんなにいるとはな」
「そうですね。北エリアの冒険者ギルドでは見ない方たちが多いようです」
エリーとシンシアは、年齢層や装備が自分たちとは違う冒険者たちが多いことに気付いていた。
「みなさん! 集まってくれ!」
突然、大きな声が辺りに響き渡った。
声の主を探すと、どうやら一人の戦士が皆に向かって話しているようだった。
「俺は、この共同クエストのリーダーを務める戦士デニスです! これから今回の作戦について説明するので、集まってもらいたい!」
デニスがそう言うと、冒険者たちはデニスに向かって集まってきた。
「今回の作戦には、20のパーティと11名のソロの方、合わせて100名以上の冒険者が参加する大規模なクエストになってます! これほどの数を揃える必要があるぐらい、エルゴナ寺院遺跡には大量のモンスターが発生していると思ってください!」
デニスの説明によると、一体一体はそれほど強力なモンスターがいないため、ランクEも含めた募集になったが、数百体規模のモンスターが遺跡に発生しているようで、それなりの人数を集めることになったそうだ。
一か所にこれほどの数のモンスターが集中することを議会は危険視し、完全に掃討するのに必要な態勢を作るよう冒険者ギルドに要請していた。
「みなさんには四つの組に分かれてもらい、遺跡を四方向から同時に攻撃することで、一体も逃がすことなく殲滅させる作戦となっています」
「おい、レネオ。あれって確か……」
「うん、あの人は初めてウォルテミスに来た日に会ったデニスさんだね。一度しか会ってないけど、間違いないよ!」
アルとレネオは、初めてウォルテミスを訪れ、冒険者ギルドが見つけられず町を
あれからもうすぐ一年。日々必死で生きてきたアル達は、道を尋ねたデニスを思い出すこともなかったが、こんなところで偶然の再会を果たした。
アルとレネオは作戦説明が終わると、デニスのところに挨拶へ向かった。
「デニスさん、お久しぶりっす!」
「あの時は名乗れませんでしたが、アルとレネオです。一年ぶりぐらいになりますね!」
「ん? あれ? 何となく覚えてるぞ。お前らはたしかレベル10から冒険者を始めた二人組だな!」
デニスは二人の若者のことをちゃんと覚えていた。
「はい。今はレベル11になり、パーティも四人になりました!」
レネオはエリーとシンシアも紹介した。
「エリーだ」
「シンシアです」
エリーとシンシアは会釈しながら名乗った。
「お嬢ちゃんたちも若そうだな! 若い冒険者が増えるのは大歓迎だ!」
デニスは優しい笑顔でそう言った。
「なんだデニス。アル達と知り合いなのか?」
アル達四人とデニスの会話に、誰かが割って入ってきた。
「スパーノさん!?」
声を掛けてきたのは、クスノキ亭の隣人スパーノ。
アルとレネオは思いもかけない人物の登場に驚いた。
「よお、アル、レネオ。昨日の朝以来だな。こんなとこで会うとは驚いたぞ」
スパーノはクスノキ亭の食堂で会うときと、なんら変わらない口調で話しかけてきた。
「こっちもスパーノさんとこんなとこで会うなんて驚いたぜ」
「スパーノさんはデニスさんとお知り合いなんですか?」
「知り合いも何も、デニスとは同じパーティだからな。なあデニス?」
スパーノはアルとレネオに返事をしながら、デニスに向いた。
「ええ。スパーノ殿とはここ五年ぐらい組んでもらっててな。お前らもスパーノ殿と知り合いだったとは」
デニスも少し驚いた顔をした。
「はい。僕たちが住んでるクスノキ亭の部屋の隣がスパーノさんの部屋なので」
「クスノキ亭? スパーノ殿がクスノキ亭に住んでるって話、本当だったのか! 中央エリアの冒険者ギルドからクスノキ亭までは結構遠いから、冗談かと思ってたよ。」
デニスは、より驚いた顔をして言った。
「はっは。お前ら人間と違って、俺ら獣人は1日の動く距離が長いからな。ところでアル達は、もう共同クエストをやるまでになってんのか。まさかお前らと同じクエストをやる日が来るとはな」
スパーノは感慨深げな表情をしながら言った。
「ちょうどランクEでも参加できる共同クエストだったので。他のクエストは混雑してるっていうのもありますが」
レネオが参加した経緯を話した。
「なるほどな。今は冒険者学園の卒業生が現れる時期か。ランクEのクエストは混んでるかもな。だから最近、お前らエクストラスキルの習得をしてたのか」
「ああ。習得するのにしっかり二週間かかっちまったけどな」
一番時間が掛かったアルは、もっと早く習得できないもんかと思いながら言った。
「なんだアル。この前も言ったが、エクストラスキルなんて簡単に習得できるものじゃないぞ。昔いた『異世界人』じゃあるまいし、そんなもんだろ」
スパーノはアルに言い返した。
横で会話を聞いていたエリーは、
「なあ、『異世界人』って何だ?」
とシンシアに訊くと、
「さあ? 私も聞いたことないはないですが」
とシンシアも首を
「お嬢ちゃんたち、『異世界人』を知らないのかい? スパーノ殿は『異世界人』と会ったこともあるようだぜ。なっ、スパーノ殿!」
デニスはスパーノに、『異世界人』の話をしてあげるよう目で
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます