第46話 共同クエスト

 再び集まってから三日が経ち、アル達四人はクエスト生活を再開していたが、ダンジョンは相変わらず混雑していた。

 それでも習得したばかりのエクストラスキルを試すため、報酬が低いが多少空いている、ウォルテミスダンジョン地下3階までのクエストをこなしていた。


「アル。おまえらでも受けられる共同クエストの募集があるんだが、やってみるか?」

 夕方、クエスト報告のため冒険者ギルドを訪れると、ジャンからそう提案があった。


「共同クエスト? レネオ、知ってるか?」

「いや、僕も聞いたことないけど。ジャンさん、共同クエストって何ですか?」


「ん? えっとな、普段のクエストと違って、複数のパーティで同時に参加する大規模なクエストが共同クエストだ。そうそう募集があるわけでもねえし、あっても高ランクパーティのみがほとんどなんだが、今回は珍しくランクEからなんだよな」


「みんなで参加とか楽しそうじゃん!」

 エリーが乗る気になっている。


「なるほど。それで今回の募集はどんな内容のクエストですか?」

 勢いでアルがOKする前に、レネオは冷静に尋ねた。


「これが今回の内容だ」

 ジャンが画面をアル達に向けて見せた。


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 クエストNo GR636-005908

 クエスト名 【共同】エルゴナ寺院遺跡掃討作戦

 地域 タオスの森

 依頼者 ウォルテミス議会

 依頼内容

 タオスの森の奥地にあるエルゴナ寺院遺跡に、大量のモンスターが発生している。冒険者の力を結集し一掃してもらいたい。


 報酬 一人につき銀貨十二枚

 ランク E

 ソロ 可

 ソロレベル 20以上

 期限 なし

 出現モンスター アンデッド

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「一人につき銀貨十二枚!? マジか!?」

「四人だと四十八枚ってことじゃん! すげえ……。アル、これ決まりだな!」

 アルとエリーが報酬額に目を輝かせた。


「共同クエストは報酬的に美味しいクエストだ。実質二日の作戦なんで、1日で六枚もらえることになるぞ」

 ジャンがさらにたたみみかけてきた。


「おおぉぉ!」

 アルとエリーの声が揃った。


「アンデッドって、僕らのレベルで戦えるモンスターなんですか?」

 二人のテンションは気にせず、レネオは落ち着いて尋ねた。


「もちろんランクEに設定されてるぐらいだ、おまえらでも大丈夫だ。アンデッドと言っても、ほとんどが人間系のスケルトンかゾンビらしいみたいでな」


「なるほど、アンデッドモンスターの中では最弱クラスですね。それならいけそうだ。シンシアはどう思う?」

 レネオはジャンの説明に納得したが、シンシアにも意見を求めた。

「レネオと同じ意見です。それなら大丈夫かと」


「よし、レネオとシンシアがOKなら大丈夫そうだ。おっちゃん、それやるぜ!」

「了解だ。集合は明日の夕刻、戦闘は明後日になるぞ。しっかり準備するんだな」

「ああ!」

 共同クエストの受領が確定した。



 それから翌日、アル達はタオスの森の集合場所へ向かった。

 目的地であるエルゴナ寺院遺跡の近くに開けた場所があるらしく、そこに前日のうちに集合し、明け方前に攻勢を仕掛けることになっていた。


「なあレネオ。アンデッドって何だっけ?」

 集合場所へ向かう途中、アルはレネオに訊いた。


「あれ? ずっと聞いてこないから知ってるのかと思った。アンデッドは不死のモンスターだよ。もう死んでて生き物じゃないってこと」

「え? 死んでるのに動くのか?」


「うん。死んで怨念だけで動いたり、死霊使いネクロマンサーによってあやつられたりして動くみたい」

「そうなのか……。なんか聞いてるだけで怖えんだけど、そんなの倒せるのか?」


「もう死んでるから痛みも感じないし、ゾンビやスケルトンは首を刎ねるしかなさそうだね」

「そうか。聞けば聞くほど大変そうな敵だな……」

 アルは難しい顔をして、レネオの話を聞いていた。


「なんだなんだ、アル! もしかして今さらアンデッドが何か聞いてんじゃないだろうな?」

 少し離れて歩いてたはずのエリーが、いつの間にか近くに来て意地悪く言った。


「な、なんだよ、別にいいだろう。エリーは知ってるのかよ!」

「そりゃあアンデッドぐらいな! アンデッドは死んでんのに動く不死のモンスターさ」


「そ、そうみたいだな……」

 勝ち誇ったエリーに、アルは言い返せなくて悔しかった。


「エリー!」

 シンシアが後から近づいてきて、

「もう、そんな意地悪な言い方して! エリーも昨日私に聞いて知ったばかりじゃないですか!」

 と暴露した。


「ば、馬鹿っ、シンシア言うなよ!」

 エリーが慌てて人差し指を口にあてる。


「なんだよ、エリーだって知らなかったんじゃねえか!!」

「は? 知ってたなんて言ってねえし!」


「はは。エリーの言う通りだね」

 レネオが楽しそうにエリーの味方をすると、四人の笑い声が辺りに響いた。


 アル達はこれから初めてのモンスターと戦うのだが、ダンジョンのように地下でもなく、共同クエストで他パーティがいる安心感もあり、遠足のような浮かれた気持ちで戦場へ向かっていた。

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