第45話 エクストラスキル

「アル様、二週間お疲れ様でございました」

「どうも」


 アルは、戦士ギルドの受付の椅子に座り、イーサンの話を聞いていた。


「アル様は初めてのエクストラスキル習得となりますので、簡単にご説明させていただきます」

 イーサンが穏やかに話し始めた。


「エクストラスキルはコモンスキルと違い、レベル制ではございません。そのためスキルの効果は使用者の基礎パラメータ値のみが影響いたします。また、スキルによっては使用条件があり、使用するのにHPやMPを消費する場合もあれば、回数制限が設けてある場合もございます」


「ふうん、そうなんだ」

「はい。ただ、アル様の習得なされた『盾攻撃』は、とくに条件はございませんので、必要であればどんどんご使用くださいませ」


「なるほど。条件があるスキルは使いどころを考えないとダメそうだな」

「左様でございます。アル様は意外と聡明でいらっしゃいますな」


「はあ……」

 アルは褒められたのだとは思ったが、言葉の意味は分からなかった。


 それからイーサンは、他にはどんなエクストラスキルを戦士ギルドで習得できるのか、シーフギルドのように他のギルドでも戦士に向いているエクストラスキルはあることなど、様々な役に立つ情報を教えてくれた。


「何か質問はございますでしょうか?」

「そうだなあ。じゃあ、次は何をとればいいと思う?」


「次に習得するエクストラスキルでございますか? そうでございますね――――」

 イーサンは鼻の頭を掻きながら少し考えて続けた。


「次はアル様に『挑発』をお勧めいたします」

「挑発?」


「はい。これはモンスターの気を自分に向けるスキルでございます。パーティでこのスキルを持つ盾装備戦士いると、極めて効率的に戦闘を進めることができますが、それなりの防具やHPが戦士には求められます」


「そっか。それは装備を揃える方が先っぽいな。でも次に来るときはそれにするぜ!」


「はい、それがよろしいかと。他にはございますでしょうか?」

「いや、大丈夫だ」

 アルはそう言って立ち上がった。


「それでは、これで当ギルドの訓練を終了とさせていただきます」

 イーサンは頭を下げると、奥へと戻っていった。


「ああ、ありがとう!」

 アルは声を上げると、勢いよく戦士ギルドから飛び出し、クスノキ亭へ走って帰っていった。



 クスノキ亭に戻ると、前日にエクストラスキルを習得していたレネオが待っていた。

 昨日まで死んだような目で帰ってきていたアルたったが、今日はいつもと違う表情なことにレネオはすぐ気付いた。


「アル、おかえり。その顔は習得できたんだね!」

「ああ! なんだかレベルアップしたような気分だぜ!」


「はは、その気持ち分かるよ! エクストラスキルなんてもっと先だと思ってたから、一人前になった気分だね」

「ジャンのおっちゃんが言うように装備も欲しかったけど、いい機会だったしな」


「そうだね、アルは戦士だから装備も重要だもんね。ただ、戦闘系クエストは混んでるし、お手伝い系って気分でもなかったから、僕らとしても丁度よかったかな」

 レネオはエリーとシンシアも含めて言った。


「たしかに、みんなは装備の買い替えは必要なさそうだしな。そういえば明日はエリー達と待ち合わせだけど、二人も習得できてるといいな」

「うん。二人はしっかりしてるから大丈夫だと思うけど。明日、エリー達も習得してたら、そのまま試しに行きたいね!」


「だな。俺も実戦では使ってないし、早くモンスターに使ってみてえ! エリー達どんなやつ覚えてくるか楽しみだな!」


 その日の夜、アルとレネオはお互いの習得したエクストラスキルの話題で、久々に遅くまで語り合った。



 そして翌日の朝、アル達は冒険者ギルドで待ち合わせをすると、四人ともエクストラスキルの習得が完了していた。


「おいおい、アル。習得できたのが昨日って、ギリギリじゃねえか。レネオでさえ一昨日か。たのむぜー」

 エリーは朝から元気にアルへ絡んできた。


「う、うるせえ。たまたまだよ、たまたま」

「エリー、そんな言い方しないでください。早ければいいってわけではないし、習得するスキルによって大変さだって違うんですから」

 シンシアがアルをフォローする。


「それでもエリーとシンシアは凄いと思うよ。とくにシンシアは一週間で習得してたんだから驚いたよ!」

 エリーは10日で、シンシアは一週間で習得していたので、レネオが素直に関心していた。さらにシンシアは、ついでに新しい魔法『ガード』も覚えていた。


「はっは、そうだろうそうだろう! どうだ、アル。惚れ直したか?」

 エリーはアルの肩に手を置き、いやらしく言った。


「なっ、ばっ、なななななに言ってんだ!? だいたいシンシアがすげえのに、何でエリーが威張ってんだ!」

「照れるな照れるな!」

「なんで俺が照れるんだよ!!」

 アルがそう言うと、皆で笑い出した。


 この二週間はそれぞれで過ごしてきたが、四人は日常が戻ってきた実感がしていた。

 それぞれが一つ階段を上り、また皆で集まれたことが楽しかった。


 それから四人は習得したエクストラスキルの話をし、戦闘系のクエストで実践してみることにした。



 アル:『盾攻撃』盾を使って攻撃する。ダメージは低いが稀に相手を気絶させる。


 レネオ:『集中』すべての魔法効果が高くなる。


 エリー:『二刀流』両手にそれぞれ武器を持つことができ、与えるダメージが1.3倍になる。


 シンシア:『信仰』光属性魔法の消費MPが減る。

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