第43話 戦士ギルド
エクストラスキルとは、生まれつき誰もが持っている先天性の通常スキルと違い、後から習得することができる後天性のスキルである。
戦士ギルドや魔法使いギルドなど、職業ギルドにお金を払って習うのが一般的で、習得するのに二週間以上は訓練が必要だった。
「レベル11のおまえらには少し早えかな。貯めたお金は装備を揃える方が先か?」
エクストラスキルの話を振っておきながら、ジャンはそんなことも言ったが、アル達はもう新しい力を手に入れる気持ちに
四人は話し合いのすえ、クエストが混雑するこの時期に、エクストラスキルを習得しようと決めた。
アル、レネオ、エリーはそれぞれの職業ギルドで、僧侶のシンシアは教会でエクストラスキル習得の訓練を受けることになる。
「じゃあ一旦クエストは休憩で、二週間後に待ち合わせな」
アルがそう確認すると、早速四人はそれぞれエクストラスキル習得に向かった。
みんなと別れてから、アルは中央エリアにある戦士ギルドを訪れた。
戦士ギルドの存在は一応知っていたが、来るのは初めてである。
「ここが戦士ギルドか。店にしか見えねえけど」
アルが言うのも無理はなく、中は武器や防具を売っていて、通り過ぎる人々は武具屋だと思っている人がほとんどだった。
人通りの多い道沿いにあるが、人の出入りはほとんどない。
「すいませーん!」
アルは木製の扉を開き、中を覗き込みながら声を出した。
少し待っても反応がない。
アルの声はよく通るほうなのだが、聞こえなかったかもしれないので、中に入りもう一度声を出す。
「すいませーん。誰もいないのかー!」
今度は奥の方でバタンと何か音がすると、誰かが近づいてくる足音が聞こえた。
「これはこれはお待たせしました。私は受付をしておりますイーサンと申します。当戦士ギルドにご用でしょうか?」
そう言って、物腰の柔らかい初老の男性が現れた。
「ここは戦士ギルドでいいんだよな? エクストラスキルってやつを習いに来たんだが」
「おお、そうでしたか。お若い戦士のようで。少々お待ちを」
ゆったりとした動作のイーサンは、近くの棚から大きな布を出すと受付台の上に広げた。
「こちらが当戦士ギルドで習得のできる、エクストラスキル一覧でございます」
「おっ! どれどれ」
アルは広げられた一覧を見ると、布にはスキルの名前と金額が書いてあった。
「こんなにあるのか……。名前だけ見てもよく分かんねえな……」
「戦士殿はどのスキルにするか決まっておりますでしょうか?」
「いや、なんも決まってなくて」
「なるほど、そういうことでしたか。すでに何かエクストラスキルをお持ちでしょうか?」
「いや、何も」
「ふむ。――――でしたら『盾攻撃』などはいかがでしょうか? 盾装備の戦士とお見受けしますので」
イーサンはアルの持っている
「盾攻撃?」
「はい。このスキルを持ってますと、盾で相手にダメージを与えられますし、
「おおっ! それ俺の目指す戦士っぽいな! それで頼むぜ!!」
「そうですか、それがよろしいかと。では念のため適性を確認いたしますので、手をそちらの測定用の紋に置いてください」
イーサンは受付台の端にある模様を差して言った。
「適性?」
「はい。エクストラスキルの場合、訓練しても適性がないと習得することができません。と言いましても適性がないと出るのは、高難度のものか極端に向いてないときぐらいでしょうか」
「難しいとか簡単とかあるのか?」
「
「ふうん」
アルは言われたとおり手を置くと、模様が薄っすらと光りだした。
戦士ギルドの受付台も、冒険者ギルドと同じように魔動力で動く魔法具で、測定用の紋に手を置くとステータスだけでなく、エクストラスキルの適性があるか確認することができる。
「アル様。適性に問題ございません。銀貨三十枚になりますがよろしいでしょうか?」
「ああ、もちろんだ」
「では座ってお待ちください。あ、そうそう、スキルの画面を確認してみてはいかがでしょうか」
イーサンはアルから代金を受け取り、受付台の画面を少し操作をすると、椅子を進めてから奥へ戻っていった。
アルはイーサンが見えなくなるまで目で追ってから、椅子に座り自分のスキル画面を表示させた。
「あれ? 変わった?」
今まではスキル画面を開くと、大量のスキル名とレベルが表示された。
ある程度似たような分野で固まってはいるものの、確認したいスキルを探すのにいつも苦労していた。
ところがいま開いた画面に表示されたのは二つ。
コモンスキル
エクストラスキル
なんとなく想像はついたが、アルはコモンスキルを選択すると、普段見ていた大量のスキルが表示された。
「やっぱりな。じゃあこっちが」
アルは画面を戻しエクストラスキルを選択しなおすと、『盾攻撃』という文字が表示された。
「なんか文字の色が薄い気がすんな。レベルもないのか?」
アルは画面を見ながら独り言を言った。
「そのとおりだ! エクストラスキルにレベルの概念はねえ。文字が薄いのは習得してねえからさ」
突然近くで声がすると、体格の良い丸坊主の男が立っているのにアルは気づいた。
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