第41話 魔鉱石の収集

 クエスト報告の翌日、アル達は冒険者ギルドに朝から集まり、四人パーティになったこともあり、なるべくダンジョン系のクエストをやろうと話し合った。


「危険度は増すかもしれないけど、レベルは早く上がるだろうし、報酬額も高めだからね」

 レネオの意見に皆、賛成した。


 四人になったことで難しいクエストにいどめるようにはなったが、報酬が四等分され今までより減るのも事実。

 二人の頃でも出来るようなクエストをやっていたら、四人になった意味もなくなるので、四人じゃないと出来そうにないクエストを選ぶことにした。


「じゃあおまえら、こんなのどうだ? お試しなんかじゃないダンジョンクエストだぞ」

 冒険者ギルドのジャンは、四人になったアル達に新しいクエストを提案した。


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 クエストNo GR636-002729

 クエスト名 魔鉱石(ホブゴブリン)の収集

 地域 タオスの森

 依頼者 グレスリング魔法協会

 依頼内容

 タオスの森の中にある、ウォルテミスダンジョンの地下四階または五階に行き、ホブゴブリンが落とす魔鉱石を五個集める。


 報酬 銀貨二十枚

 ランク E

 ソロ 不可

 ソロレベル -

 期限 5日間

 出現モンスター ゴブリン族、オーク族

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「魔鉱石? なんだっけ?」

 アルはジャンにクエストの内容を確認した。


「ん? 知らなかったか? 魔法具を作る材料になったり、魔動力の燃料になったりするのが魔鉱石ってやつよ」


 ジャンの説明によると、魔鉱石は特定のモンスターを倒すとたまに落とすことがある、魔力を持った鉱石。

 ゴブリンやオークが落とした記録はないが、ホブゴブリンはたまに落とすらしい。


 また、落とすモンスターによって魔鉱石の質に違いあり、強力なモンスターほど高品質の魔鉱石を落とすと言われている。

「おまえらが倒せるモンスターだと、魔鉱石を落とすのはそんなにいないだろうな」


「アルッ! 銀貨二十枚だってよ! これにしようぜ!!」

 エリーが報酬額を見て、前のめりに喰いついてきた。


「アル。オークより少し強いみたいだけど、僕らならホブゴブリンでもいけるよ」

 レネオも声を掛けてきた。


「だろ? だろ? アル、やろうぜ!!」

「ああ、分かった! おっちゃん、このクエスト受領するぜ」


「そうかそうか。おまえらもやっとここまで来たな。ほら、登録したぞ。無理しない程度に頑張ってきな!」

 いつもの響く声で、ジャンは応援するようにアル達を送り出した。


「よっしゃ! 銀貨二十枚いただきだぜ! ほら、行こうぜ!!」

「もう、エリーったら……」

 はしゃぐエリーを見て、シンシアは少し恥ずかしそうな顔をした。


「エリーじゃないけど、銀貨二十枚は凄いよね。しっかりクリアしよう!」

 レネオもやる気を見せ、エリーとシンシアを追いかけた。


「なんだよ皆、気合入ってんな。俺も負けてらんねえぜ」

 レネオと二人のときは、銀貨二、三枚のクエストがほとんどだった。

 それに比べ格段に高くなっているクエストに、アルも皆と同じように気持ちが高揚していた。




 地下四階で遭遇したホブゴブリンは、見た目はゴブリンに似ているが遥かに大きく、明らかに上位種のようだった。

 オークほど身体は太くないが、背は少し大きい上に幾分素早く動く。


 現れるのはホブゴブリンとゴブリンの組み合わせだったので、アル達は地下三階と同じ戦い方で、ホブゴブリンを退治していった。


「十匹で二個か。思ったより落とさねえな」

 戦闘後、アルは手に持った黒い鉱石を見ながら言った。


「だね。一個で銀貨四枚だけはあるのかも」

 レネオが魔鉱石の価値を計算して言った。


 エリーとシンシアを見ると、だいぶ疲れた様子で言葉数が少なくなっている。

 HPは回復魔法で満タンではあったが、ステータスには表れない疲労が溜まってきているのだろう。


「今日はここまでにしようぜ。明日は残り三個見つけるぞ!」

 アルは地下四階を歩き回り、ここが潮時と感じたので、帰る合図をした。


「ああ、そうだな。どうせ一日で五個は無理そうだ」

 エリーが撤退に賛成した。


「それにしても、本当にダンジョンだと何度もモンスターが出てくるんですね」

 シンシアが不思議に感じたことは、他の三人も感じていた。


 ジャンから、ダンジョン内のモンスターは短時間でほぼ同じ場所に何度も現れると聞いてはいた。

 実際、同じような場所で同じようなモンスターの組み合わせに遭遇していた。


 前日のダンジョン探索は目的地があったので、帰りしか同じ場所を通らないが、今日はモンスターと戦うのが目的。

 何度も同じ場所を通りながら、モンスターと遭遇するのを待ったので、とくにそう感じたようだった。


「ほんっと、ダンジョンて訳わかんねえ場所だよな」

 エリーもそう感想を漏らした。



 翌日も、アル達は地下五階には行かず、地下四階だけを回っていた。

 やはり同じような場所で同じような組み合わせと戦い、一日目より少し無理をして、魔鉱石を三個見つけるまで戦いを続けた。


「ああぁー、つっかれたー!!」

 エリーがそう言ってダンジョンの床に寝転んだ。


「エリー、はしたないですよ」

 シンシアはそう言いながら、疲れでその場に座り込んだ。


「さすがに三日連続でダンジョンに来たからね。これで銀貨二十枚が手に入るし、明日は休憩にしようか? アル、どう?」

「レネオがそう言うならそうしよぜ。明日もダンジョンとか言われても、ちょっとなって感じだし……」

 アルはレネオの提案を素直に受け入れた。


 アル達四人は、この三日間でダンジョンの大変さを十分味わった。

 しかし同時に、ダンジョンクエストの楽しさと美味しさをそれ以上に味わうことができた。


 アル達のレベルではいつもあるわけではなかったが、これからも冒険者として、ダンジョンクエストをメインにやっていこうと、改めて思った。

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