第38話 地下三階での戦闘
四人はウォルテミスダンジョンの地下二階も難なくクリアした。
現れるモンスターは地下一階と同じくゴブリンだけだったので、同じ戦術をすることで無傷のまま地下三階へ辿り着いた。
「また私の出番がありませんね。良いことなんでしょうけど……」
シンシアが少しだけ申し訳なさそうに言った。
「何言ってんのさ。シンシアが回復できるから、あたしら思い切って戦えるんじゃないか。な、アル?」
「あ、ああ、その通りだ。シンシアが居てくれて助かるぜ! レネオもそう思うだろ?」
「う、うん! 僕ら後衛は、何もしなくてもいるだけで
皆でシンシアをフォローした。
シンシアが恐縮する気持ちは理解できなくはなかったが、三人とも本心で言っている。
「みんながそう言うなら……。ごめんなさい、あまりにも役に立ってない気がして。そうですよね、誰もケガしない方がいいですものね」
エリーと二人だけの頃は、一戦が終わるごとに傷だらけの相方を回復させていた。それと比べ少し物足りなさを感じていたものの、シンシアはそう言って気を取り直し、
「では、このまま私の出番がないことを祈って、先に進みましょう!」
と地下三階の探索へと歩き出した。
「そうそう、先に行こうぜ!」
エリーが声を掛けると、アルとレネオも歩みを進めた。
地下三階も、地下二階までと雰囲気は同じだった。
同じような石造りの部屋や通路が続いていて、しっかり覚えてないと自分たちが何階にいるのか見失いそうだ。
アル達四人は、このままゴブリン戦をこなすことを想像していたが、最初のモンスターとの遭遇で、シンシアの祈りが届かないことになりそうだと予見した。
「なんだ、あのブタみたいな顔のモンスターは?」
「は? どう見てもブタじゃなく牙があるから
エリーはアルの言葉を否定しながら、今までになく警戒心を高めていた。
現れたモンスターはオーク二匹にゴブリン二匹。
オークはゴブリンより一回り以上は大きい。どす黒い肌をし、隆起した筋肉が持っている棍棒を軽々と振り回すであろうと容易に想像できた。
四人は知る由もないが、オークのレベルは11。コボルドやゴブリンはレベル
「俺がオーク二匹を引きつける! ゴブリンの方は頼む!」
アルはそう叫んで、オークへ向かって行った。
タイミングを合わせてレネオがスリープの呪文を唱えると、意識を失った二匹のゴブリンにエリーが攻撃を仕掛けた。
アルはそれを確認しながらオークの懐に入り、棍棒の一撃を正面から盾で受けた。
一発目を耐えそのまま反撃をするつもりだったが、想像以上の重い攻撃に、アルは後ろへ弾け飛んだ。
「アル!!」
「大丈夫、バランスを崩しただけだ!」
三人が同時に名前を呼んだが、アルはすぐに態勢を立て直し剣と盾を構えた。
思っていたよりも強い攻撃だったが、最初から想定していれば耐えられないことはないとアルは思った。
ただ、装備の薄い三人へ攻撃させるわけにはいかなかった。
(盾の上からでもダメージが10か……)
アルはステータス画面を開き、減ったHPを確認した。
「うおおぉぉぉぉっ!!」
オークの気がエリーへ向く前に、アルは大声を出しながら斬りかかった。
アルの剣とオークの棍棒がぶつかる。
アルはそのまま押し込むどころか、剣が弾かれないよう必死で握るのがやっとだ。
「オオオォォォォ!」
もう一匹のオークがアルに殴りかかった。
アルはしっかりと盾で受け止め、なんとか態勢を崩さず耐えたが、それでも盾の上からダメージを喰らった。
構わずオークに剣を突き刺すと、オークは悲鳴をあげ一歩下がった。
そのオークへレネオのフレイムアローが命中するが、それでもオークは動きを止めずアルに襲い掛かる。
「くそっ、さすがにHPが高えな」
アルは動作が
「よし、一匹目!」
アルが一瞬一息つくと、そこへもう一匹のオークの攻撃が横っ腹に直撃した。
「しまっ!?」
アルが勢いよく床に転がる。
「待って! すぐに回復を!」
パーティステータスのアルの名前が黄色くなったのを確認すると、シンシアはすぐにヒールを唱えた。
「ありがてえ。これなら!」
アルが立ち上がるころには痛みがなくなっていた。やはり僧侶がいるのは心強い。
再びアルは態勢を立て直し、
「はああぁぁぁぁー!」
と声を上げオークへ突き進む。
オークもアルに向かって攻撃を仕掛けた。
足は遅くゆっくりとだが、力強くアルへ棍棒を振り上げようとする。
そこへゴブリンを倒し終えたエリーが、後ろからオークへ攻撃。
「遅いんだよ!」
エリーの短剣がオークの背中に突き刺さり血が噴き出る。
オークは反射的に後ろを振り返ると、その隙を逃さないようアルが斬りつけた。
「どうだ!」
オークはそれでも攻撃へ移ろうとしている。
「もう一度だ!!」
アルとエリーは声を合わせながら、前後同時に攻撃をした。
オークは悲鳴に似た雄たけびを上げると、そのまま動かくなり消滅していった。
モンスターは死ぬと消滅するが、アル達が浴びた返り血も一緒に消滅した。
「オークはちょっと強敵だったね!」
レネオがそう言いながら、アルとエリーに寄ってきた。
「ああ。一発一発が結構重かったぜ。戦士の俺以外は気を付けたほうが良さそうだ」
近づいてくるレネオとシンシアを見ながら、アルは答えた。
「モンスターって服に付いた血も、倒したら消えてくれるところが良いよな!」
「ええ! ウルフとか獣が相手だと、洗濯が大変だったですからね」
エリーが上着の裾を引っ張りながら、シンシアと話している。
(おいおい、感想はそっちか……)
アルとレネオは、エリー達の会話を聞いて、やっぱり性別が違うなあと感じていた。
「地下三階はゴブリンだけじゃねえみたいだな。三人とも、慎重に行くぞ!」
アルは転がっている松明を拾いながら言うと、先頭に立って前へ進みだした。
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