第27話 次のクエスト

 ウォルテミスに来て七カ月、アルとレネオは、前日の戦闘で揃ってレベル11に上がっていた。


 基礎パラメータ

  筋力 :133 →138(+15)

  生命力:130 →134(+15)

  知力 :83 →84

  精神力:101 →104

  敏捷性:98 →100

  器用さ:107 →110


「思ったより上がらねえな」

 アルが自分のステータスを見ながら呟いた。


「あ、おはよう! 朝からそんなの見てるんだ。仕方ないよ。レベル1上がっただけで強くなったら、レベル30とかの頃には大変なことになっちゃうし」

 レネオはアルの声で目が覚めると、起き上がって自分のステータスを開きパラメータ上昇分を確認した。


 基礎パラメータ

  筋力 :84 →85

  生命力:98 →100

  知力 :136 →141(+15)

  精神力:134 →139(+15)

  敏捷性:95 →97

  器用さ:103 →106


「だけどよ、レベルが上がったからには、これからのこと考えようぜ」

 アルの言葉に、レネオも同じようなことを考えていた。


 冒険者ギルドの助言もあり、安全に戦えるような戦闘クエストをこなしてきてが、レベルを上げるのに七カ月かかってしまった。

 同じことを繰り返していくなら、次はそれ以上の時間が掛かるのは間違いない。


 それに手持ちのお金がまったく増えていない。クエストの収入と、生活費や薬草代の出費が同じぐらいなのだ。

 そのため装備品を買い替えることもできていない。


 さすがに今の生活に焦りを感じていた二人は、何かを変えていく必要があると考えていたのだ。


「次は報酬額がそれなりのクエストにしてみねえか? 冒険者らしくモンスターと戦うやつとかさ」


 アルがそう言うと、レネオはおでこに指をあてながら少し考えて、

「たしかにアルの言う通りだね。このまま同じようにやっていくわけにもいかないし。今日、冒険者ギルドに行ったら、いつもと違うクエストを探してみよう!」

 と賛同した。


 それから二人は普段通りクスノキ亭の一階で、エイダの作る温かい朝食をとってから、冒険者ギルドへ向かった。



「レベルが上がったのはめでてえが、もっと報酬が良いクエストがやりてえだとぉ?」

 冒険者ギルドの受付ジャンの大きい声が建物内に響き渡った。


「ああ、ジャンのおっちゃん。いいの紹介してくれよ!」

 アルが無邪気にお願いする。


「レネオ。おめえもアルと同じ考えか?」

 ジャンがレネオに視線を向ける。


「はい! このままじゃダメだと思うので」

 レネオが真剣に返事をする。


 無鉄砲なアルだけではなく、冷静なレネオまで同じ意見なのを知り、ジャンは大きく息を吐くと、

「仕方ねえな……、少し探してみるか」

 といつものようにクエスト検索画面を表示させ、二人のためにクエストが探し始めた。


 冒険者ギルドの受付ジャンと、アル達はすっかり仲良くなっていた。

 声が大きいせいで、他の冒険者たちはジャンが受付をする列を敬遠しがちなので、いつも並んでいる人数が少ない。


 逆にアル達は好んでジャンの列に並び、受けたクエストのほぼ全てがジャンに紹介してもらったものだった。


「これでもやってみるか?」

 ジャンがクエスト画面を二人に見せた。


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 クエストNo なし

 クエスト名 ウォルテミスダンジョン探索

 地域 タオスの森

 依頼者 冒険者ギルド

 依頼内容

 タオスの森の中にある、ウォルテミスダンジョンの地下三階(祭壇の間)まで行く。


 報酬 銀貨十枚

 ランク E

 ソロ 不可

 ソロレベル -

 期限 5日間

 出現モンスター ゴブリン族、オーク族

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「おおぉ、ダンジョンだってよ!!」

「あれ? クエストNoがなしになってますし、依頼者が冒険者ギルドなんですか?」

 アルが嬉しそうにはしゃぐ中、レネオは冷静に質問をした。


「これはな、冒険者ギルドがダンジョン経験のないやつのために準備した特殊クエストだ。こっちとしちゃあ何にも得のねえクエストだから、あんまり依頼しねえんだけど、ちょうどいいのがないから特別だ」

 ジャンにしては小さな声で説明した。


「地下三階に行くだけでいいのか? 楽勝じゃん!」

「行くだけって、それなら僕らでもいきなりできそうです!」


 アルとレネオは、久しぶりに意欲を感じるクエストを受け、気持ちが高ぶっていた。


「おまえら分かってんだろうな? あのダンジョンはかなり下層まで行かないと罠が仕掛けられてるようなことはないが、出くわすのはモンスターだぞ? ゴブリンやオークは武器を持って襲ってくるから、気を抜くと死ぬぜ」


「分かってるぜ! 俺たちだって冒険者なんだ。モンスターと戦うつもりで準備してきたつもりだ!」

 ジャンの必要以上の脅しに臆せず、アルは強く言い返した。


「ならいいが……」

「もちろん、危なくなったらちゃんと逃げます。前に進むことだけじゃなく、退くこともここへ来て学びましたから!」

 レネオはジャンの心配を払拭するように言った。


「そこまで言うなら……。だが、準備はしっかりして行くんだぞ? 無理してでもポーションを買って行けよ。魔力節約のため松明たいまつもな。それから――――」


 まだまだ新人扱いだな、アルとレネオはそう思いながらも、心配されることに悪い気はしていなかった。


「ありがとうございました」

「ジャンのおっちゃん、行ってくるぜ!」


 二人は正式にクエストを受領すると、ジャンに挨拶をして出発した。

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