第26話 スキルとスキルレベル
ある日、部屋に戻るとアルはベッドに座ってスキル欄を表示させた。
「冒険で使えそうなやつでスキルレベル6になったのは、剣と盾と探索ってとこか。索敵が4のまま上がらねえな……」
この世界では生きることに必要なすべての技術が、スキルで表示される。
戦闘で必要な武器や魔法の技術だけでなく、生活に必要な料理や掃除などもスキルの一つである。
熟練度はスキルレベルで表せられ、まったく未経験のレベル1から、神業クラスのレベル10まで10段階になっていた。
レベル4で何とか使える程度になり、レベル7を越えると得意と言ってよくなる。
「なあレネオ。索敵ってモンスターとか敵が近くにいるか分かるスキルだよな? 今まで索敵で敵に気付いたことなんてないんだけど、どうやったらスキルレベル上がると思う?」
アルがスキル欄を弄りがらレネオに話しかけた。
「んー、剣とか料理とか、繰り返し経験を積めばレベルが上がるスキルは分かりやすいんだけど――――。僕も魔力探知が4から上がらなくて困ってるんだよね」
「魔力探知って?」
「魔法属性が強いモンスターが近くにいたら気付いたり、魔法で罠を仕掛けてあったり物を隠してたりするのも気付けるはず」
レネオもスキル欄を目の前に表示させた。
「ふうん。魔法っぽいスキルはあまり見ないから、そんなのあるの気付かなかったな」
「そんもんだろうね。魔法使いや僧侶じゃなければ、上げなくてもいいと思うよ。こういうのは同じスキルレベルでも、知力と精神力の値で大きく効果が変わるみたいだし」
「なるほどな。戦士系の俺にはいらなそうだ。やっぱ前を歩く戦士としては、索敵が欲しいとこだな。『待て! 何かいるぞ、気をつけろ!』って言ってみたい。そういえば、他のスキルレベルはどうなった?」
アルはベッドに寝転がりながら、レネオのベッドへ向き直った。
「僕は魔法の火属性が7になったよ。無属性が5のままだけど。製図も結局3だし、他はここへ来て半年、何も上がってないかな」
「火属性以外は上げないのか?」
「うーん、水・風・地の属性はどれもスキルレベル3なんだけど、これ以上は自分だけじゃ無理なんだよね。上げるにはスキルレベルが高い人に、先生になってもらわないといけないんだ」
魔法に関わる属性は、火・水・風・地・無・光・闇の7種類ある。
魔法使いは火・水・風・地の4元素と言われる4属性と無属性を、僧侶は光属性と無属性を習得するのが一般的だ。闇属性は使える者が少ないため、魔法書も手に入らず、世の中にあまり広まっていない。
「魔法使いギルドに行ってお金を払えば、他の属性を上げることはできるんだけどね」
「魔法使いギルド? 冒険者ギルドじゃないギルドってことか?」
アルは起き上がって聞いた。
「あれ? 教えなかったっけ? 冒険者ギルド以外にも、魔法使いギルドとか戦士ギルドとか、職業系のギルドがあるんだよね。各職業に関わる色んなことを相談できる場所だよ。クエストみたいに単発の仕事じゃなく安定した収入が欲しければ、定職を紹介してくれたりするし、スキルレベルを上げることもできる場所なんだ」
レネオはスキル欄を消し、アルの方を向きながら説明した。
「ああ、言われてみれば聞いた気がするな。職業系のギルドか……。何にしても金が掛かるから、とりあえず用はなさそうだって思ったな」
「そうそう。僕も他の属性を覚える前に、無属性や他のスキルを上げるように頑張るよ。火属性はもう7で、当分上がらないみたいだからね」
「そういえばジャンのおっちゃんが言ってたもんな。スキルレベル8を持ってる冒険者は、レベル20以上のやつしか聞いたことないって」
アルはまたベッドに寝転がり、天井を見ながら言った。
「うん、レベル20なんてこの調子じゃ何年も掛かりそうだから、僕らはスキルレベル7をいくつも持てるように頑張るのが先っぽいね」
「そうだな。俺なんて剣も盾も6になったばっかだ。早く7にしねえと」
ウォルテミスに来てから半年、アルとレネオはまだまだ自分たちが力不足なのを痛感する日々が続いていた。
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