第20話 王国第二の都市ウォルテミス
アルとレネオは、冒険者ギルドを探すがてら、せっかくなのでウォルテミスの町中を回ってみることにした。
歩いていて気付いたが、町中の道は全てが直線で、道と道は直角に交わっている。
地図上で町の形を見てみると綺麗な四角形になっているので、人が集まり自然に作られたのではなく、計画的に作られた町のようだ。
「レネオ、見てみろよ、あれ。馬がいないのに馬車が動いてるぜ!?」
大通りを行き来している馬車を見ていたアルが、たまに馬に引かれず台車だけで動いているものがあることに気付いた。
「あれはきっと魔道車だよ。馬ではなく魔道力で動く車を好む貴族が、たまに使ってるって聞いたことあるけど」
レネオも初めて見るようで、説明しながらも驚いた表情をしている。
「魔動力って、あんなものまで動かせるのか!」
「魔法使いがあんなの動かそうとしたら、かなり大魔法使いじゃないと無理だと思うけど、魔動力なら魔法使いじゃなくても動かせるね。この町じゃ魔動力がだいぶ浸透してるみたい」
魔動力があれば、魔法使いっていらないんじゃないかとレネオはふと考え、何だか複雑な気持ちになった。
「さっき行った百貨店とかいうとこも、入り口の扉が勝手に開いたのが魔動力だったよな? 中も冒険者ギルドと同じように魔動力のライトだったみたいだし」
アルはさきほど立ち寄った、複合商店を思い出していた。
百貨店と書いてあったその建物は、六階建てで一際大きく、一階は食料品、二階は衣料品など一般生活品、三階は魔法屋、四階は武器で五階は防具のみが販売されていた。六階は客が入れないようなので、事務所か何かだろう。
「そうだね。この町は生活の中に魔動力があるのかも」
「ここまで村と違うとはな!」
町の大きさだけじゃなく、生活文化がまったく違うウォルテミスに、二人は新しい生活が始まろうとしていることを実感した。
「そろそろ冒険者ギルド見つけないと」
レネオがため息をつくように言った。
「だよな。だいぶ歩いてるけど、冒険者ギルドっぽいの無かったもんな」
アルは両手を頭の後ろに充てながら返事をする。
色々なお店に立ち寄りながら歩いているとはいえ、二人はマークのお店を出てから、かなりの時間が経っていた。
それなのに地図を見る限りは、町の真ん中にも到達していないようだ。
「マークに冒険者ギルドがどの辺か聞いとけば良かったな。南の端って言われたら、今日中に見つけられる気がしねえよ」
アルが地図を広げて、そう言った。
クエスト中と違い、探索スキルを使っても自分の位置しか表示されない。
歩いているとたまに案内板があるのだが、冒険者ギルドの位置はどれも書かれていなかった。
「やみくもに探しても見つかる気がしないね。アル、少し休憩しよっか」
レネオが、近くにある露店を指差した。
「いいねー!」
アルが激しく同意する。
その露店は串で刺した肉を、その場で焼いて売っていた。
それなりに客が並んでいるので、この界隈では人気店なのかもしれないと思った。
アル達は早速並んで二本ずつ購入し、露店の周りにたくさん置いてある、テーブルの一つに座った。
「いやー、マジ腹減った。そういえば町に入ってから何も食ってなかったしな!」
アルが勢いよく肉に食い付く。
「なんか、町の外を歩くより疲れたね」
一本目の半分ほど食べてから、レネオは言った。
二人はウォルテミスに来るまで、毎日さんざん歩いてきた。
今日はいつもの半分も歩いてないはずだが、人混みに慣れてないせいかいつもより疲れている。
「なんだか食べたら歩くの
レネオが一本目を食べ終わったころ、すでに二本目を食べ終えたアルが言った。
「どうしよっか? 冒険者ギルドを探すしかないんだけど、アルの言う通り今日中に見つけるのが難しくなってきたね」
二本目を食べ始めながら、レネオはどうしたもんかと悩んだ。
「あー、こんなに広いとは思わなかったもんな。案内板にも書いてなかったし。誰か道案内してくんねえかな」
アルも頭を抱える。
「アル、それだよ!」
レネオがアルの言葉に飛びついた。
「ん? どれ?」
「誰かに案内してもらえばいいんだよ!」
「案内? 案内してもらうって、誰に?」
アルはレネオの話に疑問を返した。
「もちろん冒険者ギルドに行きたいんだから、冒険者に聞けばいいと思う!」
レネオは簡単じゃんと言うようにアルに答えた。
二人はウォルテミスに来てから、薬師マークとしか話してなかった。
人の多さや雰囲気に飲まれ、誰かに話しかけることもなく、誰からも話しかけられなかった。
それに、ザレア村では誰かに頼んだり尋ねたりする必要もなく生きてきたので、冒険者ギルドも自分たちで探そうとしか考えてなかった。
「言われてみればそうだな。冒険者なんて見た目でだいたい分かるし、冒険者に聞けばいいだけじゃん!」
アルは立ち上がり、
「早速探しに行こうぜ!」
と歩き出した。
「ちょっ、待ってよ!」
レネオは残っていた肉を無理やり口に入れ、慌てて後を追った。
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