第15話 冒険者ギルド②

「じゃあ次だけど……、パーティ登録かな」

「パーティ?」

 女性の言葉にアルが反応した。


「そ、パーティ。二人はどこかのパーティに入るんじゃなくて、自分たちでやっていくんだったわよね?」

「はい、そのつもりです」

 今度はレネオが反応した。


「なら自分たちでパーティを組んでもらう必要があるわね。正式に冒険者になると、他の人とパーティを組むことができるの。パーティを組んだら、個人としてだけではなくパーティとして登録しとくわ」

 女性の説明では、パーティを組むことで、戦闘の経験値を自動で分配されたり、回復魔法や支援魔法の効果がパーティメンバーの方が高かったりと、色々な利点があるようだった。


 女性は水晶を横にどかし、台の上にある模様に触れて何らかの画面を空中へ表示させると、慣れた手つきで手際良く動かし、

「はい、最初だからアル君とレネオ君をこっちでパーティ登録したわよ。リーダーはアル君ね。今後は自分たちでメンバー加えたり外したりできるわ。さ、試しにパーティステータスを表示してみて」

 と言った。


「パーティステータス?」

 アルは怪訝そうに言いながら手をあげると、見慣れないステータス画面が現れた。


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 パーティランク E

 リーダー アル レベル10

 メンバー

  レネオ レベル10

 クエスト

  なし

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「おおぉ、レネオの名前が一緒に見えるぜ。人のレベルも見えるのか」

 アルは初めて見る画面に目を丸くしている。


 アルの言葉を聞くと、レネオも同じようにパーティステータスの画面を開いた。

「本当だね! なんかパーティになった感じ。ランクっていうのは何ですか?」


「そのパーティメンバーの活躍度って感じかしら。新人ばかりで作ったパーティならEから始まって、クエストをたくさんクリアしていくとランクがEからAへ上がっていくわ」


「そうなんですね」

「へえー」

 レネオとアルは女性の説明を熱心に聞く。


「で、ランクごとに受けられるクエストも変わってくるの。ランクが上がると難易度の高いクエストを受けられるのよ。その分、報酬も高くなるわ」


 女性は台の上にある模様にまた触ると、ステータス画面のように半透明な何かの画面が、アル達の前に現れた。

「これがクエストの画面よ。このランクって書いてあるところが、そのクエストを受領するのに必要なパーティランクね」


 女性は表示した画面を例に、クエストについての説明を二人に続けた。


「それにしても、その模様すげえな」

 話半分で聞いていたアルが、台の上の模様に興味を示した。


 女性はニコッと笑うと、

「これは操作用の模様でしかなくて、この台全部が魔動力で動いている冒険者ギルドの装置なのよ」

 片肘を台につきながら言った。


「装置!?」

 アルとレネオが同じ言葉を発する。


「そそ。今みたいにパーティ登録したり、クエストの表示や依頼、クエストの完了確認も出来るわ。世界中どこの冒険者ギルドにも同じ装置が置いてあるの」


「世界中!?」

 急に規模の大きい話になり、アルとレネオはまた同じ言葉を発する。


「フフッ、そうよ、凄いでしょ? 冒険者ギルドって凄いのよ」

 女性は台についた肘を左右入れ替えながら、もう一度模様に触れて画面を消した。


「なんか知らないことがたくさんあって楽しいね!」

 レネオがアルに同意を求めると、アルもうなずいている。


「これで晴れて冒険者の仲間入りを果たしたけど、これから二人はこの町で活動するのかしら?」

 女性は両方の肘をつきながら聞いてきた。


「いえ、活動の町はウォルテミスにしようと思ってるんです」

「この町も悪くねえけど、せっかくだから大きな町に行ってみてえしな」


 二人が答えると女性は、

「あらそう。若いうちに色々行った方がいいものね」

 と残念そうな顔をした。


「ただ、クエストを一つやっていこうと思ってます。僕たちの先生から、バロスビーで冒険者登録をしたら、そのまま一つクエストをやるようにと言われてまして」

「そうなのね。ちょっと待って」

 レネオの言葉に、女性は待ってましたと言わんばかりに、すぐに画面を表示し触りだした。


「ん~……、どれがいいかしら……」

 女性は真剣な顔をして宙で手を動かしている。


 アル達は、そんな女性を眺めながらじっと待っていた。


「これなんてどう?」

 少しして女性が手を止めると、アル達にも見えるように画面が動いた。


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 クエストNo GR635-006952

 クエスト名 コール草の採取

 地域 タオスの森

 依頼者 薬師くすしマーク

 依頼内容

 タオスの森に生えているコール草を二本採取して、ウォルテミスの北エリア第二地区にある私の店まで持ってきてほしい。


 報酬 銀貨五枚 または HP回復ポーション×3

 ランク E

 ソロ 可

 ソロレベル とくになし

 期限 5日間

 出現モンスター マンイーター

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「タオスの森って、ここからウォルテミスに行く途中にあるのよね。丁度よくない? 丁度いいよね?」

「おお。それは丁度いいぜ!」

 アルが女性の言葉を借り返事をした。


「報酬は銀貨かポーションを選べるってことですか?」

 レネオが質問すると、

「そうよ。クエストによって報酬はお金だけじゃなくアイテムを選べる場合があるの。アイテムの時は依頼者から直接受け取れるわ。お金がいい時はギルドに戻って受け取るの」

 と女性は答えた。


「なるほど。アル、このクエストにする?」

「お姉さんおすすめだし、行く途中で丁度いいし、もちろんいいぜ!」

 アルとしては何も問題ないようだ。


「マンイーターって、確か植物系のモンスターで火属性に弱いから、そういう意味でも丁度いいかな……」

「そのとおりよ! 若いのに勉強してきたのね」

 レネオは小声で独り言を言ったつもりだったが、女性はそれを拾いレネオの博識を褒めた。


「じゃあそのクエストでお願いします!」

 レネオは少し照れながら言った。


「了解したわ。報酬はお金にする? ポーションにする?」

「先に決めるんですか?」


「そうよ。クエストを受領したときに決めることになってるの」

 女性は表示画面を、自分の見えやすい向きに変えながら答えた。


「お金でいいよね?」

 レネオはアルに確認した。


「ああ、回復は薬草で十分だしな」

 アルに異存はない。


「二人ともOKみたいだし、これで決まりね! 依頼内容をクリアしたら、ウォルテミスの冒険者ギルドに行って報酬を受け取ってね」

 女性は画面操作をし、「はい、完了!」と言いながら画面を消した。


「クエストが登録されてるから、パーティステータス見てみて」

 女性にそう言われると、二人はそれぞれ画面を表示させ、クエスト欄に『コール草の採取』と記載がされていることを確認した。


「じゃあ頑張ってね!」

 女性は掌を開いて閉じてと二回繰り返し、笑顔で言った。


「色々ありがとうございました!」

「お姉さんありがとう! 助かったぜ!」


 アルとレネオは女性に礼を言うと、達成感を味わいながら初めての冒険者ギルドを出た。

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